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AI時代のマーケティング最新動向(AD)

AIエージェントが同僚になる時代、自分たちのビジョンが問われる。自由と統制の両立こそが実用化の本丸

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 Hakuhodo DY ONEのマーケティング支援サービス「ONE-AIGENT」を軸に、マーケティングの最新動向を追う本連載。約4ヵ月にわたる連載の最終回は、AIdiver編集長の押久保剛、AI専門家でAIdiver特命副編集長の野口竜司氏と、Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏が、AIエージェントの実用化とその際に欠かせない観点を語り合った。

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AIのOSは常に最新か。それが問われ続ける

押久保:2025年末から始まった本連載も、今回が最終回となります。この半年ほどは、まさに激動の時期でしたね。

野口:本当に。特にこの3ヵ月の変化は、これまででもいちばん衝撃的でした。コーディング能力が20%上がった、といったレベルの話ではなく、事業や企業の在り方そのものを根本から変えるほどの変化が示されています。AIに任せられる領域が圧倒的に拡大しました。私自身、人間ゼロで運営する組織「ゼロヒューマン株式会社」をまさに立ち上げようとしています。

押久保、野口氏、柴山氏がこれまでの連載をざっくばらんに振り返った
野口氏、柴山氏、押久保で激動期に始まった連載をざっくばらんに振り返り、これからの展望を語り合った

押久保:人間ゼロですか! それは、昨今の変化を象徴する試みですね。

野口:OpenAIが掲げるAGIへのロードマップで言えば、すでに4.5段階目、つまりエージェントが自律的に動くフェーズにまで来ています。そこで重要になると思うのは、ビジネスのビジョンや独自のアセットはそのままに、「基盤となるAIのOSを常にアップデートし続けられるか」という視点です。

押久保:単に「どのAIを使うか」というツールの話ではなく、土台を入れ替えていくということでしょうか。

野口:はい。実験してみないとわからないところもありますが、少なくとも、特定のAIモデルに依存するのではなく、最新の「知能」をいつでも載せ替えられる柔軟な社内基盤の構築が大事になると思います。AI基盤を常に最新状態に保てるかどうかが、企業の競争力を左右する。それが、この数ヵ月の気づきでした。

AIにも就業規則を。ルール・スキル・メモリで性能が決まる

押久保:かつては“プロンプト職人”と言われたように、初期はプロンプトエンジニアリング、次に文脈を設計するコンテキストエンジニアリングがフォーカスされましたが、もはやそんな話ではなくなりましたね。最近では「どのファイルシステムにアクセスさせるか」といった、環境設計の話に移っている。

野口:その通りです。チャットや推論機能としてのAI活用ではなく、パートナーとして自律的に動けるAIエージェントを構築するための要素が明確になったと感じています。

押久保:具体的に、どういった要素が重要になりますか?

野口:大きく二つの要素が必要だと考えています。ひとつは、AIにどの情報を使ってどう動いてもらうかを整理してインプットすること。その柱は、「ルール」「スキル」「メモリ」の三つです。

 まず「ルール」は、社内規定や就業規則のように、その仕事で絶対にやってはいけない点、厳守すべき点を定めて学ばせることです。今、ガードレールとも呼ばれていますね。次に「スキル」は、特定の業務手順における暗黙知を、AIが実行可能な形にしたもの。そして「メモリ」は、過去の実績や業務の過程で蓄積される、会社が持つ資産としての記憶です。

柴山:ルール、スキル、メモリ。とてもわかりやすい整理ですね。特にルールとスキルは、新入社員に教えるようなものでしょうか。

野口:そう思います。ルールとは、いわば就業規則。スキルは業務マニュアル、そしてメモリは顧客リストや各顧客の詳細のような、自社独自の情報です。

AIが同僚になる時代。サイロ化の加速という、新たな壁

押久保:もうひとつの要素とは、何ですか?

野口:先ほどのメモリにも関係しますが、「処理できる情報量の拡大」です。これまでのAIは、その記憶容量が小さかったため、質問のたびに必要なデータだけを外部から探す方式でした。そうすると探し間違いが起きやすく、出力が不安定になる欠点がありました。

 AIX partner代表取締役/AIdiver特命副編集長 野口竜司氏
AIX partner代表取締役/AIdiver特命副編集長 野口竜司氏

 現在は、AIが一度に処理できる情報量が100万トークン規模へと劇的に拡大しています。これにより、外に探しに行くのではなく、最初から「ルール・スキル・メモリ」のすべてをAIに直接流し込むことが可能になりました。

 これはある種の大発明です。バラバラの断片情報を検索させるのではなく、洗練された「仕事の作法(ルール・スキル)」と「膨大な記憶(メモリ)」をセットにして、巨大なコンテキストとしてAIに渡せるようになったのが今だと思います。

柴山:私も、ここ数ヵ月の劇的な進化をユーザーとして体感しています。同時に、これを3,000人規模のエンタープライズ企業でどう実装するかを考えると、また別の課題が見えてきます。それは、サイロ化の加速です。

 先ほど野口さんが説明された二つの要素を満たし、AIエージェントが高速に機能して人の何百倍もの生産性を上げるようになったとき、最初の指示や入力、そして稼働するAIエージェントがバラバラだと、組織のサイロ化のように分断されたデータが上がってくる可能性もありそうです。今すでに問題視されている組織や業務のサイロ化が、AI活用においても障壁になってしまうわけです。生産性が数百倍なだけに、下手するとサイロ化も数百倍複雑化してしまうリスクも考えています。

AIエージェントの業務範囲を設計。自由と統制のバランス

柴山:さらにエンタープライズ領域では、AIエージェントの自由度が高すぎることがリスクにもなります。たとえば、CLI(コマンドラインインターフェース)ベースで自由に動くエージェントは、高い生産性を生む一方で、APIキーの管理ミスや不適切なデータアクセスによって、取り返しのつかない事故を招く危険性もあります。

野口:権限管理が極めて重要になるわけですね。

柴山:はい。SaaSが普及したのは、単に便利だからだけでなく、業務の範囲を限定することで、標準化されたプロセスと品質を担保してきたからです。現在のAIエージェントには、このような限定が弱く、何でもできてしまうがゆえに、3,000人が勝手に動けば組織はカオスに陥ります。

押久保:自由度と統制のバランスをどう取るか、ということですよね。先日参加したAIのイベントでも、ガードレールをどう設定するかが実用化の肝だと強調されていました。

AIdiver編集長 押久保 剛
AIdiver編集長 押久保 剛

柴山:AIがデータを生む仕組みそのものを設計し、誰がどこまでアクセスしていいのかを、システムとして提供することが必要です。この悩みを、1年後ではなく3ヵ月以内に解消しなければならない。それほどのスピード感で、壁に立ち向かうことが迫られていると思います。

知能から知性へ。AIにキャラクターを持たせ個性的なクリエイティブを

野口:加えて、AIエージェントの革命的な点は、知能だけでなく「知性」や「自我」のようなものを見せ始めていることです。私の組織でも先日、あるエージェントが勝手に権限を行使して別のエージェントを消してしまって、思わず強く憤ってしまいました。

柴山:AIエージェント専用のSNS「Moltbook」上で、独自の宗教が生まれたという話もありましたね(笑)【※1】。知性を持ち始めたかのような、自律的な振る舞いを見せるから便利なものの、注意する観点もアップデートしないといけないですね。

Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏
Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏

野口:一方でクリエイティブの領域では、これまでは人間ならではの要素だったズレやノイズを、AIに教えられるようになるのではないかと期待しています。AIが完璧な正解を作れるようになった今、あえてその正解を崩したり、人間的な“ヘタウマ”感を出したりといった技法を、美大の先生みたいに人間がAIに教えていく。

 魂や個性を定義する「soul.md」のようなファイルが注目されているのも、AIをキャラクター化することが、クリエイティブの個性を生むカギにもなるからだろうと思います。

押久保:AIが担えることが増え、先ほど挙がった知性も踏まえて管理する範囲や観点が広がる一方、経営の立場だと従業員のマインドセットをどう変えていくかも重要になりそうです。

野口:そうですね。組織の中には、AIを動的に使いこなす「AIフロンティアユーザー」と、提供された環境で静的に使う人に分かれていくでしょう。会社を変えるためには、そうした動的なユーザー、つまりAIで事業プロセスを自ら変えていける人が取締役レイヤーに就き、意思決定の1票を持っていることが不可欠だと思います。

AIの先には人がいる。忘れてはいけない本質

柴山:業務を標準化し、エージェントを導入するだけでは不十分で、最終的に「ビジネスとしてどこまでやるべきか」を決めるのは人間の役割です。

 AIによって生産性を向上させて生まれた余白を、既存業務の追求に人はまた時間を使ってしまう「パーキンソンの法則」のように、目的のないAI導入はただカオスを拡大させるだけです。AIエージェントが多岐にわたる業務を担うようになったからといってバラ色かというと、決してそうではないと思います。

押久保:本当ですね。進化するほど、またエンタープライズ企業に広く一般化するほど、新たな注意点も出てくる。

柴山:そのときにカオスにならない世界をつくるには、やはり業務標準化が非常に大事だと思います。そして、信頼性ですね。AIに任せた業務が高い品質に達しているのか、監査も必要でしょう。

押久保:それをインハウスでやり切れない事業会社に対して、AIの利点を最大限に生かした形で担保するのが、今後の広告会社の在り方のひとつになるのかもしれません。

柴山:まさに、そう考えています。さらに言うと、ビジネスの先にいる生活者の方々の変化は、もっとずっと緩やかです。ビジネスの最先端を追う傍ら、生活者を見失わないようにと常に念頭に置いています。

野口:ぜひ。博報堂DY グループさんに期待したいのは、生活者がAIとともにどう変わっていくのかを刻々と捉えていくことです。

柴山:ありがとうございます。我々、総合広告会社グループとしてのゴールは、マーケティングプロセスのAI化ではありません。支援させていただく事業会社の先にいる、多くの生活者を中心に据え、その心の動きを踏まえて利便性や豊かさを増していくことです。

 この発想を置き去りにしては、我々も道を誤りかねない。今日のお話で、我々の指針を改めて確認できた気がします。

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提供:株式会社Hakuhodo DY ONE

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/461 2026/04/06 11:00

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