暗黙知は“五感”で収集 自然現象がデータになる
森:ベテラン層が活躍しているとおっしゃっていましたが、彼らの暗黙知は非常に重要なデータであるはずです。パナソニック コネクトにも大量に暗黙知が眠っていると思いますが、どのようにAIと掛け合わせようとしているのですか。
榊原:最たる例がものづくりです。我々の仕事の本丸ですから。
熟練の技や知識が活きるタイミングは、設計と開発以降の2段階にわけられます。設計段階で問われるのは、いかに速く品質の良いデザインができるかです。デザインには、堅牢性だけでなく経済合理性も含まれますし、耐熱性や放電性、耐衝撃性などの多様な機能要件を考慮する必要があります。それらをどこまで設計に落とし込めるかが、スピードを決定づけるわけです。
工程を後戻りすると大きなコストロスが生じます。そうならないように、これまではシミュレーションを通じて作る前に検証していました。ただ、シミュレーションができるのなら、そもそも熟練者の知見を設計段階でインプットできるはずです。オントロジーやナレッジグラフの技術を使えば、実現できるのではないかと思っています。

森:必要な暗黙知をどのように集めているのですか。
榊原:主に熟練者へのヒアリングです。それに加えて、現在は五感をどう駆使しているかといった分析も行っています。たとえば、熟練者にスマートグラスをかけてもらい、何をしているときに視線はどこに置かれているのかといった情報を検知する方法も採用しています。
今、工場での作業をスマートグラスで録画すると、マニュアルが自動作成されるAIを開発しています。多言語でテロップも出せるため、外国籍の方がアルバイトで現場に参加してもすぐに仕事に取り掛かれる状態を作れるのです。
これまでは、構造化データでなければデジタルの世界で扱うことが難しい時代でした。それが今は、AIが非構造化データでも扱うことができます。無理にデータを構造化しなくても、自然現象をそのままデータに落とし込めば良い点で、昔よりは楽になったともいえます。あとは、いかにそれを紐付けるか。フロンティアAI企業がいうようなオントロジーが必要になってくるでしょう。
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