相次ぐサイバー攻撃 AIがどう影響しているのか
「Mythos」「Fable」と、今年大きく世間をにぎわせたAnthropic。その日本法人であるAnthropic Japanが、設立から1周年を迎えた。この1年で社員数は約3名から50名超に。日本電気(NEC)、日立製作所、富士通など大手SIerと戦略的なパートナーシップを締結したほか、Claudeの導入企業数も1年前の10倍に伸びている。
一方で、2026年10月14日に行われたメディア説明会で注目を集めたのは安全性だった。日本企業へのサイバー攻撃が相次ぐ状況に対して、初来日したAnthropicの共同創業者 兼 公共利益部門責任者 ジャック・クラーク氏は「詳細は不明だが、AIツールが何らかの形で使われている可能性はある。しかし、自分が知る限りAIが自律的に攻撃しているという事例はない」と所感を述べた。
こうした昨今のサイバー攻撃だけでなく、AIの進化とともに安全性を求める声は大きくなり続けている。クラーク氏は記者からの「安全性と性能の向上のバランスをとれているか」という質問に「2026年は大体バランスがとれていると思う。ただ、バランスを保つことは年々難しくなっていくため、来年も善処する」とした。
Anthropic Japanとしても、2025年10月にJ-AISI(AIセーフティ・インスティテュート)との協力を発表するなど、安全性に関する取り組みをアピールしてきた。代表執行役社長 東條英俊氏は、2026年の代表的な取り組みの一つに「Project Glasswing」を挙げる。同プロジェクトを通じて、一部の日本企業へMythosアクセス権の提供が開始された。なお、Project Glasswingは10月に拡張版の「Cyber Verification Program」へ統合されている。また、Anthropicは2026年10月8日(米国時間)に重要インフラのサイバー防衛を目的としたプログラム「Critical Infrastructure Defense Program」も立ち上げた。創設パートナー11社のうち、日本からは日立製作所が名を連ねる。
同氏は、日本企業のサイバー防衛に関する課題として、次のように説明した。
「課題の一つはスピードだと思っている。Mythosが防衛に使える唯一のAIという誤解もあるが、当社として使えるものは他にもたくさんある。それらを活用して早く手当てをしておくことが必要」(東條氏)
フィジカルAIにフォーカス 日本企業の可能性
説明会では、日本に期待することも語られた。特に何度も挙がったのがフィジカルAIだ。「ロボティクス分野は日本が非常に進んでいる部分も多い」と語った東條氏。AIとの掛け合わせによって経済的な価値をどう生み出すか、実用化するかが鍵だという。
Anthropicは、2026年8月にAIがロボットや実験・製造装置を安全に操作するための共通規格である「MHS(Model Hardware Standard)」を発表している。現在は申請制のリサーチプレビューとして、一部のパートナーに限定公開されている状況だ。東條氏は「これがフィジカルAIの未来に向けた大きなステップになるのではないか」と期待を述べた。
なお、2年目に入ったAnthropic Japanは、次の5点にフォーカスする方針だという。
- 企業・公共での本格展開:金融・製造・公共など日本の基幹産業へ
- パートナービジネスの強化:SIer・リセラー・クラウドとの協業を深める、FDE協業
- 先端ユースケースの発掘:レガシーモダナイゼーション、サイバーセキュリティなど
- 研究・政策・文化との協働:Japan AI Index・J-AISI・森美術館における連携
- 採用拡大:東京オフィスの拡大と採用
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
AIdiver編集部(エーアイダイバーヘンシュウブ)
「AIdiver」(エーアイダイバー)は、株式会社翔泳社が運営する、企業およびビジネスパーソンのAIの利活用にフォーカスしたメディアです。経営、ビジネス、日々の業務をAIで変革したい「AIリーダー」の皆さまに役立つコンテンツを発信します。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
