今や仕事の良き相棒となった生成AI。しかし、アウトプットが「求めていたものと違う」というのはよくある話だ。その背景には、“宝の山”ともいえる社内データを有効活用できていない状況がある。味の素AGFのファンマーケティング推進部は、この課題を打破する挑戦を続けている。専門家の人格を持つAIエージェントの導入により、新たな価値創出に乗り出した。
年間100件の調査を実施 しかし、その使い道は……
味の素AGFのファンマーケティング推進部 マーケティング高度化グループは、主に市場調査・生活者調査から新たな施策を打ち出すのが仕事だ。一般的なマーケティングリサーチやアンケート調査に加え、検索データ・購買データ・SNSデータなど、テクノロジーを駆使したマーケティングの高度化をミッションとする。いうまでもなく、その道筋には生成AIが欠かせない。
元々、味の素グループでは全社的に生成AI活用が推進されてきた。現場レベルでも生成AIを使うシーンは増えていたという。しかし、マーケティング分野で活用するには限界があった。味の素AGFの主戦場である飲料業界、コーヒー業界の市場背景を理解していない生成AIでは、質問をしても一般論しか返してこないからだ。結局、議事録の作成などに活用がとどまってしまう。
この停滞を一歩前進させたのが、AIエージェントの登場だ。同社では2025年3月から博報堂テクノロジーズのAIエージェント「Nomatica」を導入した。戦略策定担当、マーケターなど多様な人格を持つAIエージェント同士が同じチャット内で議論し、そのプロセスを見ながら気づきを得られる仕組みとなっている。もちろん、直接AIエージェントに質問することも可能だ。
「Nomatica」で使用中のAIエージェント同士が議論をする様子
※画像は味の素AGFでの出力ではなくイメージ
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当初、AIエージェントの導入は想定していなかったという。それが、トライアルで膨大な資料を学習させたことにより、想像以上に的を射た回答が返ってきたのだ。
「当社のデータをもとに、各AIエージェント同士で壁打ちをしてくれるのです。今までにないマーケティングとAIのリアルな掛け合わせでした。これならうまくいくのではないか。そういう兆しが見えました」(山本氏)
導入後には、既に搭載されているAIエージェントたちに加えて、独自データを学習させた「コーヒー市場調査員エージェント」が構築された。山本氏は「このAIエージェントも含めた壁打ちの中で、我々が意図してなかったデータや切り口を提案してくれた」と明かす。
これができるのも、社内データが潤沢にあるからだろう。特に、長年蓄積された専門的かつ大量の調査データは「宝の山」。しかし、その価値を発揮できるかどうかは、また別の話だ。
「年間100件ほどの調査を、何年にもわたって行ってきました。しかし、データは担当者に属人化する側面があります。人事異動すると引継ぎが漏れることも少なくありません。そのため、データが蓄積されているにもかかわらず、使い方は限定的でした。過去の調査もどんどんと忘れ去られてしまっていました」(岡原氏)
これに対して、コーヒー市場調査員エージェントはメンバーの誰もが忘れていた過去の調査データまで参照して回答を出す。それにより、メンバーが新しいインスピレーションを得ることもしばしばだ。
「今のところは、大規模なマーケティングプランよりも製品関連の調査など目先の業務を中心に活用が進んでいます。今後はどういう視点で調査をすべきかなど、戦略策定にもAIエージェントを使えるのではないかと期待しています」(山本氏)
同社のマーケティング領域を担っているのは、少数精鋭のチーム。都度、上司や先輩を捕まえて壁打ちをするのが難しい場合もある。AIエージェントが100%の成果を出さずとも「意思決定のスピードを上げる」ことへの貢献は計り知れない。
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藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)
1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。
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