国内需要が急拡大 AI実践人材を20万人へ計画前倒し
グローバルの潮流に呼応するように、国内市場の熱量も高まっている。NTTデータ GenAIビジネス推進部長の奥田良治氏によると、国内におけるAIビジネスの引き合いは2025年度だけですでに約700件に達し、約200件を受注済みだという。
この需要に応えるため、最大の課題となっていたのが人材だ。同社はAI活用を推進する生成AI実践人材の育成を進めてきたが、当初の計画を大幅に前倒しし、2025年10月時点で7万人の育成を完了した。これを受け、新たな目標として2027年度末までに全社員規模にあたる20万人を実践人材化すると発表している。
これは単なるリテラシー教育ではない。コンサルタント、エンジニア、業務担当者といった職種ごとに「Yellowbelt(基礎)」から「Blackbelt(リード人材)」までのスキルレベルを定義し、実際のプロジェクトでAIを使いこなせるプロフェッショナルを量産する計画だ。
「Smart AI Agent」導入事例 補助ツールから労働力へ
20万人の人材が推進するのは、AIが自律的に業務を遂行する「Smart AI Agent(スマートAIエージェント)」の世界だ。奥田氏は「タスクの自動化からプロセスの自動化へ進化している」と語り、国内での先進的な導入事例を紹介した。これらの事例は、AIがもはや「補助ツール」ではなく、ビジネスプロセスの中核を担う「労働力」として機能し始めていることを示している。
内製化を支える新基盤「LITRON Builder」とソブリンAIへの対応
拡大する需要に対し、技術アセットの整備も急ピッチで進む。今回新たに発表された「LITRON Builder(リトロン ビルダー)」は、企業が自ら業務特化型のAIエージェントを開発するための基盤だ(2026年4月提供開始予定)。これにより、ユーザー企業は自社の業務フローに合わせたエージェントを、より手軽に構築・拡張できるようになる。
また、経済安全保障の観点からニーズが高まる「ソブリンAI(※)」への対応として、NTT版LLM「tsuzumi(つづみ)」を活用したプライベートAI環境の提供も強化。シリコンバレーの新会社で先端技術を取り込み、20万人の国内人材の育成を急ぎ、独自の開発基盤で顧客の内製化も支援していく。AIエージェント時代を見据えNTTデータグループの打ち手が加速している。
※
国家や組織(企業など)が自国や自社のデータおよび技術を基に、独立して運用・管理するAIシステムのことを指す
