AI時代に体験の場を確保すべき理由とは AXが進んだ先の働き方
藤井:上條さんご自身のお話もお聞きしたいのですが、AIの登場によって、働き方や思考が明確に変わったターニングポイントはありますか。
上條:繰り返しになりますが、「DXではなくAXだ」と気づいたときですね。AIを使うと、職種や経験、年齢の壁を超えられると学びました。それによって、今までサイロ化されていた組織が解きほぐされていきます。従来はDXに取り組んできましたが、その基本的なスキルを身につけることすら、負担が大きいんですよね。AIがサポートしてくれることでスキルの壁を超えられたら、本当の意味でトランスフォームできるのではないでしょうか。
藤井:AIをチームの一員と捉えて一緒に働くのと、AIに依存してしまうのは違いますよね。私たちはAIとどう付き合っていけば良いのでしょうか。
上條:自分でも業務を再現できることが重要だと思います。AIに頼り切ってその商品の魅力自体を自分が理解していないというのは、やはり違う。本質的な価値を理解すること、創っていくことを放棄しないでほしいです。
AIでできることと、自分たちの体験価値は違うと思います。商品そのものを手に取って体験することの価値は、AIではまだまだ補えないです。教育の一環として、体験から学ぶ機会を作ることは必要でしょう。対面で接客するときの情報量ってものすごく多いんですよ。そういった情報を、自分なりに解釈しながら学ぶ場も並行して持っておくべきだと思います。
藤井:AIの進化のスピードは非常に速いです。今できないこともすぐにできるようになる。そんな中で、将来的な働き方の理想像はありますか。
上條:対面で誰かから紹介してもらったお洋服は、買った記憶も含めて思い出になりますよね。そんな固有の体験価値を乗せて商品をお届けできるかどうかが、今後は重要になるかもしれません。私は、今日1日楽しかったという記憶をお客様に持って帰ってほしいんです。そこに価値の比重を置いて体験を提供できるとおもしろいですよね。
藤井:では、どうすればAIで人間のクリエイティビティが引き出せるのでしょうか。
上條:「それもありかも」と思えるかどうか、ではないでしょうか。絶対的に正しいものがあると思っていた場合は、どんなに人が提案しても受け入れられないですし、新しい価値に気が付かない。AIの回答も常におもしろいと思うメンタリティでいることが大切。提案される中で「あ、これもありかも」と思って採用していく柔軟性を持つと、自分のクリエイティビティの幅が少しずつ広がるはずです。
藤井:ありがとうございます。ファッション業界もAIによってどんどん進化していますが、同じ業界で働いている方に向けて、最後にメッセージをお願いします。
上條:AIがあることで、楽しい未来がくると受け入れてほしいですね。それは、自分のチームに新しいメンバーが増えたら楽しくなると思えるかによるでしょう。異物が入ることで今までのバランスが崩れるのではないかと捉えたら、不安になってしまう。新人が入ってきたと捉えられるかが、結果を左右すると思います。
まずは怖がらずに、AIを触ってみて「面白いかも」と思ってほしい。実体験がない間は他人事に感じて不安になると思うので、まずはAIを使うことにトライしてみてください。
