AIは進化する、法務はどうだ
「AIは進化する、法務はどうだ」という根橋氏の問いへの答えも明快だ。「人間も進化するしかない」。
AIに侵食されて価値を失う業務がある一方、新しい価値が生まれる領域も現れる。グローバルなコンプライアンスの高度化、複雑化に加え、サプライチェーンのコンプライアンスや経済安全保障といった分野では、ルールが頻繁に変わり、ビジネスにおけるリーガルリスクの比重も増している。
一方で、少子高齢化で人材確保は難しくなり、コストカットにより法務のリソースも制約される。「出すべき価値はアメーバ状に変わっているけれども、メンバーをドラスティックに入れ替えることはできない」。今いるチームで新しい価値を生み出すには、変化する「法務部門が発揮すべき付加価値」に向けたリスキリングが不可欠となる。
そこで根橋氏が強調するのが「戦略的な人材育成の設計」だ。全員が同じ研修を受ける画一主義も、膨大なメニューから自由に選ばせる放任主義もうまくいかない。発揮すべき付加価値→担当者→必要スキル→習得手段を一気通貫でつなげて設計する必要がある。
そのための「カスケードダウン構造」は3段階で構成される。組織責任者間で全社戦略と接続した法務部門全体の役割を議論し(Step 1)、各部・課の担う機能に落とし込んだ上で(Step 2)、チームリーダーがメンバー一人ひとりと対話し、組織の期待と本人の希望を擦り合わせて合意する(Step 3)。
組織が期待する役割が不明確だと、本人が努力してもマネージャーから「期待と異なる」と評価されかねない。しかも期待される役割は常に変化するため、都度明示しなければメンバーは進むべき方向に確信を持てない。確信を持って進む時とそうでない時では、成長のスピードに差が出るのは当然だ。
