人がAIを使うフェーズから、AIエージェントがシステム間を自律行動するフェーズへ
川上:ありがとうございます。我々がスクラッチ開発に取り組んでいるのは、汎用的なAPIだけでは、最終的に他社との差別化ができなくなることが大きな理由です。日本語は特に顕著ですが、実際に商用APIの性能は高いので、それで解決するという考え方もあります。ただ、そうすると究極的には同質化し、差別化できません。
我々の強みは、クリエイターやプランナーが持つ独自の思考プロセスを単なる生成指示ではなく、「意思決定の構造」としてAIに組み込める点にあります。独自のモデルを構築し、評価軸や判断基準までを内包した基盤を整えることで、知見が継続的に蓄積・高度化していく仕組みを構築しています。
AIが蓄積された知見を再現・拡張し、人はその上で新たな価値創出に集中する──その循環を設計することが、博報堂DYグループならではの競争力を支える基盤になると考えています。
柴山:重要なのは、データのフィードバックですよね。どこで何のデータを貯め、それをどうモデルに返すか。このデータフライホイールを回すためには、自分たちで設計の自由度を持つ必要があります。自分たちの、マーケティングの思考を徹底理解した「推論モデル」を育てる感覚に近いかもしれません。
では、この先、社会やビジネスの現場はどう変わっていくのか、井﨑さんのご見解をうかがいたいと思います。2026年はエージェントの概念が本格的に社会実装される年になると思いますが、どのような展望を描かれていますか?

井﨑:2026年から27年にかけて、変化はさらに加速するはずです。人がAIを使うフェーズから、システムそのものがAIエージェントを介して連携し、自律するフェーズに入ると思います。例えば工場の受発注、製造、物流の各システムがエージェントを介して対話し、人が介在せずに全体最適が行われる。マーケティングにおいても、同様のことが起きるでしょう。
ただ、AIエージェントが自律的に動くようになると、必ず人間は何をするのかという問いが生まれます。そこで、システムをどう要件定義するのか、どの部分は人間が考えるべきなのかの線引きが必要になります。すべてのシステムがAIエージェントにコントロールされるなら、それを制御しなければいけません。
自律するAIをどう制御するか。仕事のやり方やスタンスを転換する時期
柴山:その通りですね。予期せぬ挙動やハルシネーションにも目を配らないといけない。
井﨑:はい。AIエージェントが進化すると、中身がブラックボックス化する問題はあるので、ガードレールや、リーズニングモデルを使って判断の根拠を説明させるようなAIも出始めています。また、AIを使った監査も進んでいます。これらを組み合わせて制御する世界になるのだろうと思います。
川上:私も同感で、制御は重要な観点になると考えています。その部分にもAIも活用し、AI同士が協力してAIを教育し合う、あるいは合成データを使って自ら成長する仕組みが整えば、自動化できる業務の幅は一気に広がりそうです。例外はあるでしょうが、来年か再来年には、広告運用のかなりの領域が自動化されている世界が現実味を帯びてきます。それを目指して頑張りたいです。
柴山:今まではAIのモデル性能に投資が集中していましたが、これからはAIエージェントを軸としたビジネスの実用化にリソースが流れていくでしょう。この3年間で生成AIモデルが劇的に進化したのと同様の変化が実用レベルで起き、自律的なビジネスプロセスが当たり前になるはずです。そんな未来を見据えて、最後にお二人から読者の方へメッセージをいただけますか?
井﨑:AIを道具として使うという発想から、AIを前提に、自分の仕事のやり方やスタンスをどう変えるかというパラダイムシフトが必要だと思います。経営者ならAIを経営戦略の軸に据える、個人ならAIによって拡張された自分の能力で実現したいことを考える。そうした転換が、AIの力を最大限に味方にすることにつながるでしょう。
川上:開発者の視点では、最後に重要になるのは「評価軸」だと思っています。AIは代案を大量に生成してくれますが、何が良いのかを判断する基準は人間が持たなければなりません。自分が何を良しとするか、その哲学や価値基準を言語化できる人間が、AIを真にコントロールできるのだと思います。
柴山:そうですね。結局、AIは判断の提案はできても、その結果に対する責任は取ってくれません。責任をもって意思決定をすることが、人間に残された価値のある領域のひとつなのでしょう。我々も基盤を持つだけではなく、エージェンティックな広告代理店として、制御や評価といった人間が考えるべき部分をしっかり捉えて存在価値を高めていきたいと思います。
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