「AIすごい!」でも成果へのフローは曖昧なまま 何が最適解か?
賀茂氏がまず語ったのは、みてね事業本部におけるAI活用の基本姿勢だ。AI──特にLLMを中心とした技術基盤に積極的に投資し、業務効率化を成し遂げ、顧客価値を創出していく。AIをパートナーとして扱う。このスタンスが「前提」だと強調した。
こうしたAIとの向き合い方を実現する上で不可欠なのが「フィードバックループ」だという。AIツールやサービスの進化は非常に速く、半年先でさえ見通すことが難しい。不確実性の高い中で正解を見つけるのは至難の業だ。そのため賀茂氏らは「あえて決めすぎない」ことを重視した。
「仮説を決め打ちせず、早期にアクションし、その結果を学習した上で最新の状況に適応しながら新しい仮説を立てていく。成果を出すために、この流れを繰り返してきました」(賀茂氏)
このフィードバックループをどう回していくか。それが同事業部におけるAI推進の大きなテーマとなっている。具体的な取り組みがスタートしたのは2025年春からだ。当時すでに社内では多数のAIツールが使われていたが、ある課題が見えていた。
「AIが活発に利用され、みんながそのすごさを体感していました。ただ、何をすればAIで大きな成果がだせるのか、ベストプラクティスのイメージがまだ曖昧な状況でした。そこで、まずは試行錯誤の数を増やす必要があると判断したのです」(賀茂氏)
取りんだことは大きく二つ。一つ目は「透明性強化による情報集約」だ。この数年で特に叫ばれるようになったコンテキストの重要性。AIにどのような背景情報を渡すかが、アウトプットの質を大きく左右する。そこでみてね事業本部では、あらゆる情報のログや記録を一元的に集約し、AIが活用できる情報基盤の整備を進めてきた。元々Notionを情報ツールとして活用していた経緯もあり、これをハブとしてGitHub、Google Drive、Slackなど各種ツールを連携。AIにコンテキストを提供するための情報基盤を構築したという。

二つ目が「実験の推進」。打席数を増やすため、まずは実験のハードルを下げることから始めた。たとえば、どこにAIを活用できるのか可視化するワークショップを実施。職種を問わず“立てそうな打席”を探索していった。加えて賀茂氏は「AIツールを使いたいときにすぐ使えるようにすることも重要な観点」と話す。そのために、AIツールの利用ガイドラインや利用申請フローも整えた。もちろん、ガバナンス面でも不可欠な施策だが、ルールがあることで使い方が明確化され利用促進にもつながるのだろう。

「強制ではなかったものの、約半年で100件を超えるAI活用事例が集まった」と賀茂氏。その代表例が、LPコーディングの効率化だ。従来はデザイナーの成果物をコーダーに渡す流れで待ち時間が発生していたが、デザイナー自身がCursorを使ってコーディングするようになったことで、約30日かかっていた作業がわずか1日で完了できるまでになった。また、マーケティングチームの企画業務ではカスタムGPT(GPTs)を活用し、月28時間(業務全体の約3割)に相当する工数削減を実現している。
