「次のバージョンのClaudeに向けて作れ」──開発者への助言
Penn氏が講演の後半で展開したのは、モデルの進化を前提とした開発論だった。「勝つ開発者とは、システムの設計、導入の仕組み、プロダクト体験が、次の知能のジャンプを吸収できるようになっている人たちだ」と言い切り、現行バージョンではなく次のバージョンのClaudeに向けて作るよう促した。モデルが知的になるほど、ファイル操作や隔離された実行環境といった基本的な実行手段だけで多くのことができるようになり、複雑すぎる仕組みはむしろ足かせになるという見立てだ。
進化の兆候のつかみ方についても氏は具体的に語った。「以前は今ひとつ動かなかったタスクやプロトタイプやプロダクト体験が、動き始める。それが合図だ」。さらに、自動評価やテストプロセスを整備してモデルのアップグレードを容易にしておき、アップグレードをビジネス機会として扱うチームが勝つと続けた。
こうした進化がもたらす変化のひとつが、任せられる仕事の水準の引き上げだ。プロジェクトの進捗報告を書かせるのではなく、プロジェクトが1週間を通して軌道に乗り続けるようにすること自体を任せる。財務フォーキャストを作らせるだけではなく、フォーキャストの更新・改善のオーナーシップを持たせる──Penn氏は、モデルが一貫性を失わずに自律的に働ける時間の長さが、エージェントに委ねられる責任の幅を決めると説明した。
仕事そのものがAIで回る──プラットフォーム層の「Claude Managed Agents」
プラットフォームを担当するAngela Jiang氏は、ある架空のシナリオから話を始めた。チームが眠っている間に、プロダクトが自らの故障に気づき、エラーレポートを読み、バグを見つけ、修正を書いて全ユーザーに展開する。朝には問題は消え、変更履歴まで書き上がっている──。「AIネイティブ企業とは、人がAIを使って仕事をする会社ではなく、仕事そのものがAIの上で回り、人は成果がどうあるべきかを決める会社だ」と氏は定義した。つまり、夜間の障害対応のように、人が見ていなくても業務が完結する状態を目指すということだ。
それを現実にする材料としてJiang氏が挙げたのが、AIが実際に手を動かすための枠組みである「ハーネス」──使えるツール、実行環境、行動する権限──と、モデルに与える文脈である「コンテキスト」、そして大規模に動かす「インフラ」の3つだ。同社はこれらを「Claude Managed Agents」というプロダクトに束ね、業務プロセス全体をAIが回す基盤として位置付けている。達成したい成果(アウトカム)を指定すればエージェントが達成まで反復し続ける。一度に参照できる情報量は100万トークン規模で、エージェントが学びを書き込むメモリ、足りない知識を自ら補うスキルの読み書き、過去の実行履歴を振り返って次回の動き方を自分で直す「ドリーミング(dreaming)」という機能も備える。
基調講演では新機能として、エージェントのスケジュール実行と、認証情報を安全に預けるVaultに鍵を保管してAIにパスワードそのものを渡さずに外部サービスへ接続する仕組みの提供開始も発表された。すでにNotionは自社プロダクト内のエージェント連携に、Asanaはプロジェクト内で人間と協働する「AIチームメイト」の構築にManaged Agentsを使っているという。
デモでは、Claudeが今年2月から公式パートナーを務めるF1のAtlassian Williamsにちなみ、架空のレーシングチームのダッシュボードが示された。複数の領域をそれぞれエージェントが担当し、評価役のエージェントが達成度を判定して未達なら続行を指示する。毎晩の定期チェックをスケジュール設定できるほか、ドリーミングが機能する様子も披露された。

