価値観は変わる AI時代に「生き残るクリエイター」の条件
藤井:AIを取り入れることへの抵抗感は、ファンにも根強くあります。どう向き合っていますか。
小野:当社はすでにAI作品を数多く出していますが、今のところ炎上したケースはありません。自分たちのIPから作っているからです。観る側も「DLEのものなら」と楽しんでくれます。反対に、長年放送されている国民的アニメのように、権利が複雑に絡む作品はハードルが高いですね。
加えて、作り方も重要です。単純に作画をAIへ置き換えると、動きが気持ち悪くなってしまいます。「タメツメ」と呼ばれるアニメらしい動きを再現できるか。たとえば、当社ではわざと動きをつめる細かい工夫を裏で重ねています。AIで楽をしてコストを下げても、目の肥えた日本のファンには一発で見抜かれますから。
藤井:AIを活用しながら、ファンの期待に応える。すでに経験を積んだクリエイターだからできることですね。一方で、AIネイティブに育つ次世代の作り手は、どのようにスキルを身に着けていけばいいのでしょうか。
小野:下積みのプロセスは重要です。工数やコストを削減するためだけに業務をAIに置き換えてしまうと、若手が「絵とは何か」を学ぶ機会が失われます。だからこそ、当社は作画に一切AIを使わないフラッシュアニメーションスタジオも大切にしているのです。ただ、もしかすると、AIで作ったクリエイティブがメインストリームになる時代がくるかもしれない。むしろ、人間のほうがAIに近づいていくかもしれませんね。
藤井:価値観そのものが変わるかもしれない、と。
小野:可能性はあります。私が20代の頃、ハイビジョン映像を映画館で放映することなんてあり得ないと思っていました。しかし、今は誰も問題視しません。同じことがAIでも起きると考えられます。
藤井:では、そもそもクリエイターに求められるスキルも変わるのではないでしょうか。
小野:AIで誰もが作品を作れる時代には、個人作家や少人数のグループが商業的に大成功するチャンスが広がります。私自身、島根県でフラッシュアニメーションを始め、今では東京で作品を作れるようになりました。同じように、家庭の事情や地方在住で機会に恵まれなかった人でも、美麗なアニメーションを作り、地方から発信できる。日本のエンタメの層は、いまより厚くなるはずです。
一方で、スタジオで与えられた作業を淡々とこなすだけの人は、逆に淘汰されていくでしょう。求められるのは、AIにない着眼点を持ち、指示された範囲を超えてものづくりができる人。独自のこだわりと「これをやりたい」という確固たる軸を持つ人こそが、AI時代を生き残ると考えています。
