AIコストが増加 内製と協業のバランスを見極めよ
東條:PL上で見えるAI活用を狙うことが重要である一方で、絶対に避けるべき失敗、もしくは乗り越えるべき壁はありますか。
貫井:データがないにもかかわらずAIを活用しようとすると、失敗する。これは100も承知のはずですが、それでもやってしまう。あるあるですね。
加えて、AIコストもネックになっています。よく「PoCで終わる」といいますが、それはユーザーが使いこなせないというよりも、得られる効果に比べてAIが高いんです。本当に必要な機能だけに絞ったAIを選択するなど、何が適切か見極めなければなりません。
たとえば、会議室の予約、資料や議事録の作成などの自動化はMicrosoft Copilotでも可能ですが、ビジネス向けを利用するには一人当たり月額4,500円ほどかかります。そのため、私が過去にAI推進を主導していた企業では、翻訳、社内情報の検索、議事録の自動作成などに機能を限定したAIツールを自部門で作りました。運用コストは、一人当たり月数百円です。
東條:とはいえ、AI推進は単独で取り組んでいくにも限界があるように感じています。いかに仲間を増やしてエコシステムを構築していくのかも重要かと思いますが、AIスタートアップとの協業が一つの鍵となるのではないでしょうか。
貫井:どの企業も門外不出の技術にしたいと考えるかもしれませんが、すべてを自社開発することはやはり難しいです。経営にとっては、PLに加えてキャッシュとBS(貸借対照表)も重要ですから。
「キャッシュを食う」コストの一つが、研究開発費です。人材育成などにも投資しなければならない中、研究開発にキャッシュを投入できるのか。現実は難しい。だからこそ、他社と連携していく必要があります。
BSでいえば、株主や投資会社は総資産利益率を見ています。「利益を出すためにどの程度の資産が使われているのか」です。そこで、IT資産をなるべく除外したいというのが企業の本音でしょう。つまり、どの領域のAI活用においても資産を作りすぎないほうが良いというわけです。
他社と組んでやる。それも1社に縛られず、複数の企業と組む。自社がそうした企業に手を組む価値があるところを見せていく。この流れはますます加速していくと思います。
東條:なるほど。そんな中で、アプローチの仕方に悩んでいるAIスタートアップもいるかもしれません。自社としては、どういった企業と連携していけばビジネスを広げられるとお考えですか。最後にお聞かせください。
溝井:ずばり、技術がとがっている企業、尖っているビジネス領域にフォーカスしている企業は非常に差別化しやすいですし、当社としても手を組みやすいですね。
貫井:過去にCIOを勤めている間、多くの方が多様な提案をしてくださって、すべて良いものでした。私の当時の仕事は、その中から自社に合ったものを選ぶこと。つまり、提案が相手の優先順位に合っているか、経営にどのような影響を与えるか、技術に加えてPLやBS、キャッシュの視点で説明できる企業は強いのではないでしょうか。
