単発イベントで終わらせない、定着フェーズへの移行設計
コンテストによる利用率向上という目標が達成されたことを受け、日立ソリューションズは2026年度、後継となる新たな取り組みを始めている。ニュースリリースによれば、生成AIの社内利用率は2024年6月時点で約20%だったが、コンテストをはじめとする一連の施策を経て2025年9月時点で約85%まで上昇した。取材時点ではさらに数字が伸び、実質的な100%達成に近づいているという。
利用率という目標を達成した後、次に何を目標に据えるか。昨年度まで宮崎氏が主導したコンテストの成果を引き継ぎ、同じくAIトランスフォーメーション推進本部AX戦略部部長の酉和泰俊氏が担当者となった。酉和氏が指揮を執る今年度の取り組みでは、「全員が1人1件以上のAIエージェントを作る」ことを新たな目標に掲げた。「AIを実際に作り、さらに個人業務やプロジェクト、チームの業務に適用し、活用してもらう取り組みをイベントとして行っています」と酉和氏は説明する。
参加形式も見直し、前回は個人単位も可能だった応募をチーム単位に切り替え、優れたユースケースをレポートにまとめてもらう設計にした。すでに約200チーム、グループ会社を含めると300チームを超える規模になっているという。「利用率の向上」という数値目標から、「業務への組み込み」という質を問う目標への転換だ。
エージェントの作り方やレベルには、あえて基準を設けていない。「本当に初歩的なレベルのものでもいい。全員がAIエージェントをとにかく作るんだと、作り方をしっかりと学んで作れるようになることを目標にしている」と酉和氏は語る。利用するプラットフォームも指定していない。日立製作所グループ内でAIエージェントに関するナレッジを蓄積するシステムも参照でき、各チームが自分たちの業務課題に応じたヒントを得られる環境を整えている。
酉和氏は、日立グループ内で重視する「カスタマーゼロ」という考え方にも触れた。自社が最初のユーザーとなってAIを使い、その効果や活用法を十分に検証したうえで顧客に提案する、という姿勢だ。「自ら活用して効果を確認しているからこそ、お客さまにも自信を持って提案できる。実際の利用経験に基づく知見やフィードバックを持っていることは非常に重要です」と酉和氏は語る。社内向けの施策を、顧客提供につながる検証の場として位置付けている点は、SIerに限らず、自社の業務でAIを扱う企業の推進担当者にとっても示唆になりそうだ。
