35年のキャリアを原動力に、60歳からのスタートアップ転身とAI全振り
Biz/Zine編集部・栗原(以下、栗原):GenerativeX 執行役員/CDXOの桑原茂雄さんをゲストに迎え、「AI時代のベテランと若手の共創」をテーマに、大企業のAIによる組織変革について議論します。
GenerativeX 執行役員/CDXO 桑原茂雄氏(以下、桑原):私は東京海上火災保険(以下、東京海上)に35年間勤め、最後の7年間は東京海上ダイレ クト損害保険(以下、東京海上ダイレクト)の社長を務めました。60歳を機に「日本の大企業を元気にする変革を手掛けたい」という想いから転職を決意し、現在のGenerativeXに入社しました。
栗原:大企業での長いご経験を経てスタートアップへ転身された背景には、直近のAIトレンドがどう影響したのでしょうか。
桑原:前職時代、IBMのWatsonが登場した頃にもAIに触れましたが、当時は実務への組み込みに莫大な手間をともないました。しかし、転職を考えていた時期にChatGPTなどの劇的な進化を目の当たりにしました。代表の荒木と面談した際、「AIの進化をチャンスと捉え、本気で企業変革に向き合う」という熱意に直感的に共感し、この最先端テクノロジーに自身のキャリアを全振りしようと決意したのです。
栗原:自ら手を動かしてAIアプリ開発まで行うとお聞きしました。
桑原:実は2025年4月までコーディング未経験でした。しかしAIと対話しながら学習を進めることで、わずか1年でSaaS型アプリケーションを本番リリースし、現在は月平均で5つのアプリを制作しています。AIを使えば、年齢に関係なく従来のエンジニア数十人分のパフォーマンスを発揮できます。身をもってその可能性を体感したからこそ、大企業の変革を本気で支援できると確信しています。

誤解が多い、AIによる「暗黙知」の活かし方
栗原:自らAIの爆発的な生産性を証明されているのは非常に説得力があります。AIによる企業変革では、業務プロセスに埋もれている「暗黙知」のデジタル化・可視化がよく議論になりますが、この点についてどうお考えですか。
桑原:多くの企業が「社内にある貴重な暗黙知を取り出さなければならない」という部分にこだわりすぎて、かえって足が止まっている印象を受けます。
しかし、これだけAIが進化した現代において、過去の暗黙知を忠実に再現することにそれほどの価値があるのでしょうか。これまでの暗黙知に固執するのではなく、AIの圧倒的なパワーを前提とした「新しい秩序やルール」を根こそぎ作り直せばいいと考えています。「暗黙知にこだわらなくていいんだよ」という勇気を持たせるのも、ベテランの価値ではないでしょうか。
栗原:過去のプロセスの踏襲ではなく、AI前提の最適なプロセスをゼロベースで構築するということですね。
桑原:そのとおりです。もしどうしても暗黙知を活かしたいのであれば、白地の状態から人間に「暗黙知を話してください」と求めるのではなく、まずはAIに「この業務における最適な手順」を何度も語らせ、整理された叩き台を作らせるのが効果的です。
人間はゼロから文章を作るのは苦手でも、出来上がったものに対して「ここは共感できる」「この部分は実際の現場とは違う」と指摘することは得意です。ベテランの持つ目利き力をその検証フェーズに集中させることで、効率的に業務のブラッシュアップが可能になります。
