各社がAI投資の判断に苦慮しているのではないだろうか。社会的にAIが浸透する中、企業として導入しない選択肢はないといえるが、一方でトークンコストとの戦いとなる。この状況に「かかるコストに、得られる価値が追い付いていない」と指摘するのは、SaaSアプリケーションを展開するZohoのAI研究部門責任者 ラムプラカシュ・ラマムーシー氏だ。2026年9月25日の「Zoholics Japan 2026」にあわせて開催された記者発表会で、同氏がZohoのAI戦略を語った。
AIと聞くと、多くの人がChatGPTやClaudeを思い浮かべる。これらの汎用的なAIの精度は短期間で上がり続けているが、一律で全社的に導入するとかなりのコストがかかるのが現実だ。しかし、生産性を上げるために自動化すべき業務には、そこまで大規模なAIモデルが必要ないケースも少なくない。そのためZohoは、あえて小規模かつ安価に利用できるモデルの開発に特に注力する方針だという。
「汎用型AIモデルは、業務のサポートもできれば『次の休暇は何をしたら良いか』といったプライベートの会話までできてしまう。しかし、実際にはそこまでの機能は必要ない。特定のコンテキストのみを活用することで、各タスクに最適なアウトプットが得られる。そのため、細かいタスクに対応する小型モデルへの研究を進めている」
Zohoが公開したAIエージェントプラットフォーム「Zia Agents」「Zia Agent Studio」も、この考え方に沿って構築されている。また、自社開発の大規模言語モデル「Zia LLM」に関しても「ChatGPTやClaudeと競争するものではない」とした。
「Zia LLMという共通基盤上で、営業やマーケティング、カスタマーサクセスなど業務領域ごとのAIエージェントが立ち上がる仕組みとなっている。たとえば、領収書に記載された内容を読み取り、社内ルールに合致しているかを確認するAIエージェントなどを開発することが可能だ。このような細かい作業に、汎用的な大規模言語モデルは必要ないだろう。その作業に必要なデータ、トークンだけを活用するため、AIコストの適正化が期待できる」
特筆すべきは、ここまでの流れをすべてZohoが提供できる点だ。創業時から内製にこだわってきた同社。データセンターも保有しており、またハードウェアの設計も自社で行っている。2026年6月には自社設計のサーバー「Nathu La」も発表した。同等の性能を保ったまま、消費電力を12~18%、総保有コスト(TCO)を20~30%削減したといい、AIの推論コストの低減にもつながるとしている。今後は、必要に応じてサーバーシステムを切り替えることでコスト最適化を目指す。
なお、ラマムーシー氏とともに参加したゾーホージャパン株式会社 執行役員 Zoho事業部長 服部英喜氏からは、日本市場の位置づけが共有された。Zohoが日本に進出して25周年を迎えたが、これまでの歩みを同氏は「非常にゆっくりと成長してきた」と表現する。その上で、今が再投資のフェーズだと強調した。現在、ゾーホージャパンの社員数は約160名だが、今後1~2年で倍に増員するとのことだ。
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藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)
1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。
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