初期によくある「誤回答が怖い」 覚悟と現実のバランスが重要
──まずは現在地を教えてください。
ソフトバンク 西原万純氏(以下、西原):ソフトバンクでは、2023年からAI推進の取り組みを本格的に進めています。その中で生じたのが、使う人と使わない人の二極化です。もちろん、業務の性質上、AIの適用が難しいケースもあります。とはいえ、そもそも効果があるのかどうかを見極める段階では、一定の強制力をもった施策も行ってきました。
当初、現場から上がったのが「AIの誤回答が怖い」という声です。当社はお客さま対応に従事する社員が多く、AIの回答に誤りがあれば、大きなトラブルを招きかねません。だからこそ積極的に使えないという人もいました。
しかし、最近ではAIのほうが正確な回答を出せるケースも増えてきています。まずは経営層や事業責任者が「AIのほうが正しい」と腹をくくり、その回答を前提に業務を設計し直すという判断も必要です。その上で、現実的な打ち手として全作業をいきなりAI化するのではなく、各フェーズで承認ゲートを設けて必ず人間がチェックする設計としています。
私は、業務にAIエージェントが張り付いて自動化を進めていける状態こそが、大企業のあるべき姿だと考えています。それに向けて、業務システムの裏側にあるコードをAI向けにAIが書き換えていく取り組みを行っています。最終的には、フロントのAIエージェントと、整理された業務システムをつなぎ込んで、社員の利便性を高めていく計画です。
──一方で、DeNAではどのようなアプローチをとられているのですか。
ディー・エヌ・エー 加茂雄亮氏(以下、加茂):2025年2月、当社の南場(智子氏)が「AIオールイン宣言」をしました。思い切った発言ですが、社内では自然に受け入れられていました。ディープラーニング、機械学習と呼ばれていた時代からAI開発に力を入れており、AI推進の文化が醸成されていたからでしょう。
私自身、2022年11月にChatGPTが登場したとき、「これは世界が大きく変わる」と強く感じました。そこでまず着手したのが、ガードレールの整備です。早く始めなければ、今よりも生成AIが浸透したとき、企業の体制が崩れてしまうと危機感をおぼえました。法務やセキュリティなどの統制部門に号令をかけ、巻き込んでいきましたね。
実際の活用としては、2025年に「AI活用100本ノック」と題して社内の事例を公開したところ、大きな反響をいただきました。
西原:当社内でも非常に話題になりました。DeNA社内に閉じておいても良いメソッドだったように思えますが、なぜあえて社外へ発信したのですか。
加茂:私たちのAI推進を、より広く認知してもらいたいという想いがあったからです。以前からAI関連の取り組みに注力していたものの、まだまだ世間的な認知が得られていない現実がありました。そのため、積極的に情報を公開していく方針にしたのです。
西原:なるほど。業界をけん引する立場の企業としては、情報発信も重要な要素の一つかもしれません。
