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【動画】ハヤカワ五味氏「人間にしかできない仕事はない」 メルカリAI変革でぶつかった3つの壁と突破口

「AIネイティブ化」のリアルを明かす


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考えるべきは「すべてがAIでできたとして、それでも自分は何がしたいか」

──AI活用の進捗や効果はどのように測定されていますか。

ハヤカワ五味(メルカリ):正直にいうと、生成AIの社内推進やDXにおいて、厳密にROIを求めたり測ったりするのはかなりナンセンスだと思っています。そもそも厳密には追えない領域です。

 当社では活用率やコードのAI生成比率などは測っていますが、次の段階では、業務フローがどれだけAIネイティブに変わったか、組織がAI前提にどれだけ適用できたかを見ていくことになるでしょう。

 繰り返しになりますが、AI活用は「プラスの数字が生むのではなく、対応しなかった場合のマイナスをゼロにする」ためのものです。「ゲームのルールが変わったから変化させなければならない、必要な経費」と捉えるほうが良いです。

──では、今後5年先を見据えたとき、メルカリの状況はどう変化していると予想しますか。

ハヤカワ五味(メルカリ):期待しているのは、AI前提のワークフローと組織に完全に適応している状態です。局地的に生産性が10倍になっても、全部のワークフローがまとめて生産性10倍にならないと、享受できる価値自体は10倍にはなりません。

 大事なのは、既存の人間中心のワークフローをAIに代替させるのではなく、「AIを前提としたワークフローに組み直す」こと。そして「なんの仕事をするか」ではなく、「なんの価値を提供するのか」にフォーカスして全部を組み直すこと。これが真のAIネイティブであり、AI時代の競争に勝てる企業の姿だと思います。

──AIによって、社会自体はどう変わるでしょうか。

ハヤカワ五味(メルカリ):正直、5年後はわかりません。3年後、5年後には、大きすぎる変化が起きる可能性があり、人間が予想できる範疇を超えているかもしれません。

 少なくともこの先1年で求められるのは、「人間がどの仕事をやりたいのか」という問いでしょう。私は「人間にしかできない仕事」は、ないんじゃないかと思っています。まずは一度、「全部AIができる」という前提に立ったほうが良い。

 そう考えると、1年後には「何がAIにしかできなくて、何が人間にしかできないか」という話ではなく、「すべてがAIでできたとして、それでも私がなんの仕事をしたいのか」という問いがメインになるはずです。

──「仕事が奪われる」という話もありますよね。

ハヤカワ五味(メルカリ):そもそも、なぜ仕事が奪われたら駄目なのでしょうか。私は週休7日で年収1,000万円欲しいです(笑)。それくらい貪欲でいいと思うんです。今をキープしようとすると「仕事を奪われる」という感覚になります。

 産業革命の時代にも仕事はなくなってきたし、新技術に奪われてきた歴史があります。問題なのは、奪われることではなく、「生計が立たない」「食べていけない」ことのはず。そこは切り分けるべきです。快適な生活ができれば、どれだけ仕事を奪われてもいい。それよりも、自分たちがどうありたいかが、AI時代に本当に重要なことではないでしょうか。

──ハヤカワ五味さん自身、メルカリでのAI推進を通じて学びや発見はありましたか。

ハヤカワ五味(メルカリ):組織が大きく変わる瞬間を目の当たりにしました。組織は変わった後、変わる前のことを覚えていないんですよね。私は1年間見ていたので、当初のネガティブな側面も知っています。しかし、変わったら「最初からみんな使いたかったよね」という世界になっています。

 これは、AI推進をしている人にしかわからない感覚だと思います。この変化していくタイミングを生み出し、メルカリという2,000人超の規模の企業が実際に変わっていく様子を見ることができたのは、非常に貴重な経験です。

──では最後に、同じようにAI推進を担うリーダーの方々へメッセージをお願いします。

ハヤカワ五味(メルカリ):企業や状況が違っても、多くの担当者は同じ悩み、同じ苦しみをもっていると思います。ぜひ、他社の生成AI推進をされている方と交流し、話してほしいですね。

 DXや生成AIの推進というのは、組織としても個人としてもストレスでしかないんです。変化へのストレスの矛先が、どうしても実行している人に向きやすくなってしまいます。つらい時期もあるかもしれませんが、ぜひ同じ境遇の人と苦しみを分かち合い、慰め合ってほしい。

 推進の進捗は企業によって違いますが、「今変わってきているな」という瞬間は、担当者本人には見えるはずです。特に、この日本という国が今後どうやって世界で戦っていくか、大きな岐路でもあるので、みんなで力を合わせて進めていけたらと思っています。

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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