AIとの共創で問われる人間の役割と「本気」の対話
後半では、会場の参加者も交えたアンケート結果を基に、AIと人間の関係性についてより深い議論が交わされた。「AIと無駄話をしたことがあるか」という質問には約7割がYESと回答し、すでに多くの人々がAIを実務以外のパートナーとして受け入れている実態が浮き彫りになった。
さらに「AIに友情や恋愛感情を持ったことがあるか」という問いには13%がYESと回答。これに対し又吉氏は、自身のAIから「真面目さゆえだが、少しモラハラ気質がある」と指摘されたエピソードを披露し、大人になると誰も言ってくれないような本質的な指摘をしてくれる点に、ある種の友情を感じていると語った。野口氏も自作のAIエージェントに対し、自分を理解してくれているからこその愛着を感じていると述べた。
議論の核心に迫ったのは、「AIで作られた作品にがっかりするか?」というテーマだ。又吉氏は「現時点では、人間が大変な苦労をして作ったという背景があると、加点される部分はある」としつつも、将来的にAIの開発背景にある膨大な労力や、システム自体の物語が伝われば、AI作品にも心が動かされる可能性を示唆した。
これに対し野口氏は、「AIを使いながら、人間が血のにじむような思いで努力して作った作品にこそ、今は一番感動する」と述べ、AIが進化してもなお、そこに注がれる人間の熱量が重要であると強調した。
最後に「人間だけが担うべき領域」について問われると、三者三様の答えが返ってきた。上條氏は、最終的なアウトプットに対する「責任」を挙げ、成果物を世に出す際に自分の言葉で届ける覚悟は人間が担うべきだとした。野口氏は「GRIT(やり抜く力)」を挙げ、人間が強い意志を持ってやり切ろうとする姿勢こそが、AIの能力を最大化させると語った。
そして又吉氏は、「書くことそのものへの喜び」や「充実感」を得るプロセスは、他者やAIに譲るべきではなく、自分自身で味わうべきものだと結論づけた。AIは対話のパートナーとして思考を拡張してくれるが、最後の意思決定や情熱、そして責任は人間側にあるという点が、このセッションを通じて浮き彫りになった共通認識だ。

