「もう“脳みそ”で勝負できない」 ラグジュアリーブランドの価値が上がるといえるワケ
良品計画、オイシックス・ラ・大地を経て、自ら立ち上げたSuper Normalでもブランド運営を手掛けている奥谷氏。靴下やジャケットなどの商品開発を通じて「AI時代であろうとなかろうと、商売が難しいことは変わらない」と痛感しているという。
「いくら自分で良いと思っても、すぐに何百万円も売れるわけはありません。私自身、今までは思考、つまり脳みそで勝負してきましたが、今やノウハウはすぐに形式知化され、陳腐化していきます。AIがある程度の答えを出す時代に、脳みそだけで生きるのは限界がある。モノはたしかに急には売れませんが、日用品なら必ず誰かが買います。そう考えると、デジタルマーケティングのコンサルティングなどは“現場”に降りてこない限り、短命に終わるのでしょう」

モノが溢れる時代に、激しい競争に飲み込まれる可能性もあるが、奥谷氏は「これからはニッチなマイクロビジネスの成功者が絶対に増える」と断言する。同氏の知人はサラリーマンをしながら、多品種少量で洋服を作り始めた。現在、クラウドファンディングや自社サイトを活用して、少人数で年商5,000万円規模に成長しているという。
「私は最近よく『一人で年商1億円のスモールビジネスを目指そう』といっています。ブランドを大きくしすぎると、レッドオーシャンの競争に飲み込まれてしまう。いい意味でビジネスを小さく保つのもAI時代の生き残りの道です」
これは事業規模に限らず「泥臭く現場の仕事をやる価値に気づくべき」というメッセージでもある。その中で有利ともいえるのが、ラグジュアリーブランドだ。
「彼らはある種のクラフトマンシップが文化に根付いているため、AI時代に良いことしかないのです。色んな歴史もあります。たとえば革製品などの価値、値段は今後とにかく上がっていくと予想できます」
そのほか、接客も一つの手仕事である。コミュニティや飲み会への参加も、もしかすると価値が高まっていくかもしれない。
「スマートなことは、すべてAIがやってしまう時代です。今の人々は、答えを求めるアンサー(Answer)型が多いように感じますが、AIで誰でも回答が得られる時代になってしまう。重要な差別化要素は態度を示すこと、つまりアティチュード(Attitude)型になることです。AIが発達すればヒューマンエラーは減り、人はより大胆な意思決定ができるようになる。結果的に最後に残るのは、人間が現場で手を動かし、どんなスタンスで顧客と向き合うかという、極めてアナログなものです」
