AIエージェント時代にこそ「BPR」による根本治療を実施せよ
岡本:では、企業は具体的にどのようにSLMの導入を進めるべきでしょうか。
小澤:現在のSLMが抱えている課題は、「LM Studio」のようなアプリケーションで会話はできても、それをGoogle DriveやOne Driveと連携させるような内包型のアプリケーションがないことです。クラウド型のAIモデルで事足りると思われがちですが、今後は基幹系システムとの連携などに向けて、しっかりとしたSLMアプリケーションを開発しなければなりません。先述したJAL AI Reportのように、自社独自の業務に特化したアプリケーションをリリースできれば、現場の仕事は大きく変わります。
岡本:なるほど、LLMでもSLMでも同じ課題を抱えていますね。
小澤:解決のために何より重要になってくるのが「BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)」です。今までのDXは“絆創膏を貼る”ような対症療法で、勤怠管理や経費精算のSaaSなどを導入するだけでした。これからは業務を分解し、どのように生成AIと統合していくかを考えるための“根本治療”が必要です。「これはオフライン環境下でのレポート作成が必要なタスクだからSLMで実装しよう」といった業務分解、業務コンサルタント的な視点が求められます。
岡本:それは誰が担うべき役割なのでしょうか。
小澤:その観点は重要です。そこでAICX協会では「AIエージェント・ストラテジスト」という資格を設けます。これはAI・業務分解・組織戦略という3つの軸を評価するための資格です。これからは、いかにAIエージェントを現場業務に統合していくかが重要になるからです。
岡本:組織戦略の観点も入っている点が新しいですね。
小澤:単にプロンプトを学ぶだけでは「要約ためのAI」で終わってしまいます。私が関わっている上場企業では、社内の売上とメディアのPV数などをAIで連携させ、日次のレポートやアラートを出すための仕組みを構築しています。重要なことは、全員が使うようになるまでに便利にすることで、徹底的に現場業務とAIを統合しなければなりません。そのためには、社内に横断型の組織やワーキンググループを作る必要があります。これは経営層の理解、つまりトップの意思決定が不可欠な領域です。
岡本:経営層が本気にならないと現場は変わりませんね。
小澤:はい、私は講演などで「要約だけで終わっていませんか?」とあえて煽るようにしています。アメリカでは、ハーバード大学でMBAを取得しても、23%は就職できていません。それは調査業務や資料作成、議事録作成などをすべてAIが代替できているからです。日本も大転換期に入ることでしょう。従業員が利用する一般的なパソコンでも、SLMが使えるようになっていきます。
その契機となる2026年は、これまでDXで取り組んできた絆創膏を貼るような取り組みではなく、根本治療が必要です。現場業務にAIエージェントを組み込む、そこは日本にしかできないことだと信じて、AI戦略を推進していきましょう。
