感動の「高さ・広さ・深さ」。効率化の先にある2026年戦略の核心
押久保:2026年の戦略として「かつてない感動」を掲げています。効率化の先にある「感動」とは、具体的にどういうイメージですか。
山本:今思いついたのですが、感動には3つの軸があると思っています。高さ・広さ・深さです。「高さ」は、その瞬間にどれだけ面白いと思えるか。たとえばテニスの試合でも、見る人が見ればわかるすごいシーンも、ルールを知らない人には伝わらない。それを漫画のように「ここが面白い」という文脈を提供することで、誰でも没入できる体験が作れる。音楽や映像にも当てはまります。
押久保:「広さ」と「深さ」については?
山本:「広さ」は、その臨場感をより多くの人に届けること。テクノロジーを活用すれば、リアルタイムでスポーツ試合を再生成できるレベルになってきているので、スタジアムに行けない人でもメタバース空間で観たり、アムステルダムでやっている試合を、埼玉スーパーアリーナでみんなで観たりするような体験が作れる。
「深さ」はもう少し時間軸が長くて、感動が自分の人生に染み込んでいくイメージです。たとえば、昔すごく感動したアニメのキャラクターが、自分が悩んでいる時にそっと言葉をかけてくれる。コンテンツがあるからこそ作れる納得感というか、原体験になるような感動です。そしてこれが、一人ひとりの形は少し違っても「向かう先は同じ」という熱狂を生み出せると思っています。パーソナライズとマスマーケティングの掛け算ですね。
全社員が経営戦略に意見できるAI全員経営の試み
押久保:AIを使った組織変革という点では、具体的にどんな取り組みをしていますか。
山本:今まさに、AI領域の事業戦略を社員と議論するという取り組みを企画しています。役員会議の内容のサマリーと最新の議論を社員に公開し、その上で、誰でもリアルタイムで意見を投稿できるようにしたいと思っています。集まった意見をAIがサマライズして、そこから定量的に「みなさんはどう思いますか」と問いかけを返す。この仕組みをいよいよ具現化しようとしています。
押久保:目指しているのは、どういう状態ですか。
山本:一言で言うと、経営の「直接民主制」です。今は間接民主制の状態で「誰に任せるか」しか選べないですが、「何をしたいか」を直接言える状態を作りたい。
これには3つのメリットがあると思っています。まず経営リスクの低減。ある経営者が突然いなくなっても、その思想や意思決定の手法がナレッジとして組織に残り続ける。次に、経営者の意思決定の品質向上。現場からの情報が直接経営に入ってくる。
3つ目が実行能力の向上。自分がやりたいことが全社戦略のどこに位置づけられるかわかるので、会社のアセットを最大限使った仕事ができる。これがうまくいけば、電通グループ全体に、さらには社内だけでなく社外へもソリューションとして展開したいと思っています。
