プロンプトでは知の再生産が生まれない。インプットファイルが決め手
押久保:もう一つ、菅原さんは「プロンプトを書くな」とおっしゃってますよね。
菅原:そうです。ChatGPTに慣れている人ほどプロンプトを長く書いてしまうのですが、プロンプトで指示すると再現性がなくなり煩雑です。本当に大事なのはインプットするファイルを作り磨くことなんです。
押久保:具体的にはどう作るんですか。
菅原:フォルダの中に、自分の行動原則を書いたmemory.mdファイルを置いておく。そのmemory.mdファイルに人格や指示の癖、過去の反省点が全部書いてあります。会社についても同じで、会社のミッション・ビジョン・バリューが書いてあるmemory.mdファイルを作るだけです。
本やブログ、noteなどを書いている人はそのデータを元に作成できますし、ない人はネットで自己プロファイリングしたデータを元に作ってみるなどもよいのではないでしょうか。会社であれば、ミッション・ビジョン・バリューの他に組織図や社是などを含めるのもよいと思います。あとはClaude Coworkが一言の指示でちゃんと作成してくれます。
押久保:フォルダ運用はClaude Coworkになって一気にやりやすくなりましたね。Claude Coworkはローカルのファイルを直接読み書きできて、定期的なタスクの実行までできる。
菅原:そうです。企業研修で「いや、これはすがけんさんだから出せるアウトプットなんですよね」と言われたとき、「いや、今聞いてましたよね、僕は一言しか指示してません」と言いました。本当にそうですから。ファイルがあれば、新人でも同じ生産性になる。これが企業がClaude Coworkを使うべき理由なんですよ。
また、フォルダベースのやりとりのよいところは「中間ファイル」が残る点です。チャットベースでプロンプトでのやり取りだと、最終成果物ファイルが1個出てくるだけです。しかしフォルダに途中のファイルを置いていくやり方になると、別のプロジェクトで「同じことをこっちでもやって」と渡せる。つまり、知が再生産できます。
肉体労働と違って、知性は再利用できる。出来あがったファイルを読み込ませれば、ゼロから始めるより圧倒的にクオリティが高い。
押久保:プロンプトエンジニアリングよりも、ハーネスエンジニアリングと言われはじめてます。
菅原:まさにそういうイメージです。1回やったことを別のところで再利用できるし、次のプロジェクトに渡せる。プロンプトテクニックを磨いている人ほど、この発想に切り替えるのが大変になりますね。こういう使い方をしている人が周りにあまりいなくて、みんなプロンプトテクニックを磨き倒してる。本当に重要なのはインプットするファイルをどう作り、磨くかなのです。
エンジニアの世界観がビジネス全般に。経営・マーケのアジャイル化
押久保:AI活用はエンジニアの方が最前線を感じていると思います。菅原さんも、エンジニアのバックグラウンドをお持ちですよね。
菅原:はい、僕はエンジニア出身です。昔はマシン語でコンピューターを動かしていた。リソースがなかったから、機械に合わせた言語を書いてました。その後、CやPython、PHPになって、人間にも分かるようになった。でも、これもプログラミング言語だったわけです。
押久保:そして、生成AIが登場した。
菅原:人間の言葉で機械が実行できるようになったことが、イノベーションなんです。だから本質はチャットじゃないんです。専門言語を使わずに、エンジニアリングを人間の言葉でできるようになった。
押久保:エンジニアの世界観が、ビジネス全般に広がりつつあるのですね。
菅原:知的労働で最初に変わったのがエンジニアリングです。昔は要件定義~設計~実装~検証~完成の流れで開発工程を進めるウォーターフォール型が主流でしたが、今はクイックに仮説~検証~改善を回すアジャイル型が主流になっています。
経営やマーケティングの世界の意思決定は、まだまだウォーターフォール型に近い発想だと感じますが、これがClaude Coworkの登場によってアジャイル型にシフトしていくのだと思います。会議の場で指示を出せば、数分で資料ができて、意思決定できます。次の定例会議を待たなくてよいのです。
