AI活用で業務工数を大幅削減 部門の壁を越えたアジャイル開発で成果
損保ジャパンが中核を成すSOMPOグループは、早期からデジタルを業務や商材に組み込み、同社はDX銘柄の常連企業だ。2024年~2026年度の新中期経営計画において、金融庁による行政処分(業務改善命令)を踏まえ、顧客や社会からの信頼回復を最優先としつつ、基本戦略においては独自性とレジリエンスを追求すると提示。実現に向けて、全社横断プロジェクト「SJ-R」を始動し、変革へのアクセルを踏んでいる状況にある。
今回、コミュニケーションハブの開発においては、SOMPOグループのDXを担うSOMPO Digital Labのエンジニアが合流。保険金サービス支援部のメンバーを含めて、POD型組織による「アジャイル開発」を採用した。特筆すべきは、保険金サービス支援部のメンバーが単なる要望の提出にとどまらず、プロダクトビジョンや期待効果、ROIの試算、さらには担当者の業務フローがどう変わるべきかといった要件定義を主導した点だ。
進捗を確認するデイリースクラムや週1回のスプリントレビュー、レトロスペクティブを通じてエンジニアと密に連携し、課題の洗い出しと解決を継続的に行っている。約1年間の開発期間を経て、昨年7月に初期ローンチ、10月には全国展開するという着実かつ迅速なスピードで現場実装を実現した。
コミュニケーションハブにおける「要約AI」機能の導入は、定量的・定性的効果をもたらしている。LINEの要約機能の精度については、2割未満の手直しでそのまま使用できる水準にある。また、LINE1件あたりの記録の入力時間については、5分かかっていたものが2分ほどで済むようになった。LINEでのやりとりを担当者が考えてから要約し、Webブラウザで3段にもなるタブを開き、複数のシステムを横断してコピー&ペーストを繰り返していた作業が不要となり、1つのシステム内で記入業務が完結する利便性が現場から評価されているようだ。
また、コミュニケーションハブは「情報の標準化」にも寄与している。たとえば、対応している案件の状況について、経緯を極めて詳細に記録する担当者もいれば、要点のみを簡潔に書き留める担当者もいるなど、情報の粒度や記述スタイルに個人差が生じていた。この記録は代理店などの外部パートナーにも開示されるため、誰が見てもわかりやすい形式であることが求められる。コミュニケーションハブ導入後は、「要約AI」機能を用いることで、一定のフォーマットに従って文章を生成できるようになり、標準的な質が担保されるようになった。結果として、後続プロセスの円滑化と顧客対応品質の底上げに直結したのである。
もちろん、AIを活用した要約機能を追加しただけで結果が表れたわけではない。活用がこれほどスムーズに進んだ背景には、現場に対するチェンジマネジメントとリテラシー教育がある。
今回、要約機能には生成AIを用いているため、誤情報などを出力する「ハルシネーション」のリスクがともなった。そこで、開発チームは全国リリースの前に、先行リリース期間を設けながら、現場担当者への対面や動画による入念な説明会を実施。保険金サービス支援部の茂野氏は、「AIの出力は100%ではなく、ハルシネーションリスクもあるということをわかりやすく、しっかりと説明しました」と語る。
また、損保ジャパンでは、Google Geminiなどの生成AIを用いたツールを利用するためには、事前にDX基礎研修やeラーニングを受講し、テストに合格しなければならないというルールが設けられている。AIの限界を正しく理解させた上で、人間の確認を組み込む「Human-in-the-loop」のアプローチを根付かせようとしているようだ。
