今まではAIの"導入"が目的だった 今年こそ目を向けるべき領域とは
昨年まで、多くの企業では「AIの導入」自体が目的化されていたのではないでしょうか。まずはAIを使う、AIに慣れるフェーズでした。しかし、今年に入ってから各社の関心は明らかに次のフェーズに移っています。「AIを導入したものの、思ったように業務で使えない」と気づき、「導入する」から「使う」にフォーカスし始めました。
これにともなって、AIへの投資の姿勢も変わってきています。以前はアプリケーションそのものへの投資が中心でしたが、今はそのアプリケーションを実際に機能させるための土台、つまりデータ基盤やインフラへの投資に視点が移っているのです。
初回のテーマは、なぜ企業はデータ基盤・インフラに着目しなければならないのか。それを考えるうえで、まずはAIビジネスの構造そのものを一度整理しましょう。
AIビジネスは、大きく3つの層に分けられます。現場のユーザーが直接触れる「アプリケーションレイヤー」、データを蓄積する「インフラレイヤー」、そしてこれらの間にある「コンテキストレイヤー」です。コンテキストレイヤーとは、AIがデータの意味や関係性を理解し、業務の文脈と結び付ける役割を担う層。特に、アプリケーションと蓄積したデータを接続するため、AXの肝だといえます。
データ蓄積は、かなりの企業がDXの流れで取り組んできました。データウェアハウスやデータレイクといった大規模なデータ基盤を構築しているケースは多いはずです。その延長線上で、CRMやSFAなどの大手SaaSも導入されてきました。
ただし、これらは人が分析・活用することを前提に設計された仕組みであり、AIがデータの意味や関係性まで理解できる形に整備されているわけではありません。そのため、データもあるし高性能なAIソリューションも導入したのに、なぜか両者がうまく嚙み合わない……という状況に陥るのです。
そう考えると、よくある「PoC止まり」が腑に落ちます。多くの企業はPoCからAI導入を始め、そこではたしかにうまくいく。それは、PoCのために、AI向けの小規模なデータ基盤を作り替えて試しているからです。
ところが、本番運用となると対象データの規模が一気に広がり、その作り替え作業に膨大な手間とコストがかかります。結果的にROIが見合わなくなり、PoCから先に進めなくなってしまう。これが、AI投資が成果に結びつかない大きな理由です。
この問題は、日本だけに限った話ではありません。一方で、海外のほうが一足先にPoCのフェーズから抜け出しています。前述したデータ基盤の構築に積極的に投資をし始めているというのが、実状に近いはずです。日本企業の場合は、まずデータの壁を分解して把握し、対策を講じなければなりません。ここからは、企業が抱えるデータの壁を4つに分けて見ていきます。
