本質的なAI活用を阻む4つの壁 日本企業の“あるある”
「データの壁」と一言でいっても、その内側にはいくつもの要素があります。私はこれを大きく4つの壁として整理しています。
1つ目の壁は「分断」です。 データは蓄積されているのに、1つの場所にまとまっていない状態を指します。
部門ごとに違うシステムを使っている、あるいは同じチームの中でも業務内容によってまったく別のSaaSを使っているというケースは、よくある話です。本来はデータを取りまとめて可視化し、意思決定に必要な情報をすぐに引き出せる仕組みを作りたいところですが、データが分散していると統合がなかなか進みません。AIからすると、なおさらアクセスしづらい。
この分断を解消する方法として、システムを一つに統合する方法も考えられます。しかし、そうすると既存の各システムが持っていた良さが失われたり、移管作業に手間がかかったりと、実務上のハードルが高いのが現実です。既存のシステムを前提としながらも、データをまとめられる方法を探す必要があります。
これには高度な技術が求められますし、ビジネスとしてきちんと実装されている例はまだ少ないです。1社が単独で取り組むのはなかなか難しいと思います。
2つ目の壁はデータが「非構造」であること。ここには2つのポイントがあります。1つは、そもそもデータの形式がバラバラという点です。テキスト、画像、PDF……形式が違うだけでAIの処理の仕方も読み込みの可否も変わります。たとえば、名前の情報に「氏名」というタグと「ネーム」というタグが付いていると、AIにとっては同一の情報であると認識しづらいのです。
もう1つは、文脈を読み取ることの難しさ。人間であれば、「野球」と聞いて「あの選手」「あのチーム」「バット」「グローブ」などとアイデアが浮かび、文脈でどの話をしているのかを理解できますが、AIはまだその領域にたどり着いていません。そのため、人間の頭の中ように多次元的なつながりをもつデータ基盤を構築する必要があります。ところが、多くのデータ基盤は、いまだにスプレッドシートのような2次元的な構造でしか整理されていないため、AIが理解できない環境になってしまっているのです。
しかし、データ基盤の精度が高ければ高いほど、AIのアウトプットの質も上がります。だからこそ投資価値が高く、競争優位性を左右する部分です。
3つ目の壁は「陳腐化」が挙げられます。これは単純に古いデータが古いまま残り続けてしまう問題です。AIは、学習時点や参照時点の情報をもとに判断します。そのため、データが古いままでは、AIも古い情報を前提に回答や提案をしてしまいます。たとえば、組織変更や商品情報、顧客情報が更新されていなければ、AIは誤った判断を返す可能性があるのです。
AIの精度を維持するためには、データそのものを継続的に最新化する仕組みも欠かせません。とはいえ、更新作業を自動化するのは技術的にハードルが高いこともありますし、また社内データだけに閉じていると情報の幅もリアルタイム性も欠けてしまいます。オープンデータとどう組み合わせるかも、今後の重要な論点です。
そして最後の壁が「未接続」です。実務でAIを使いたいというニーズと、AIを使えるようにするためのデータが乖離しているのです。データ基盤を整えたうえで、いかに実務の運用につなげていくかも乗り越えるべき壁の一つといえます。
たとえば、営業担当者がAIに「この顧客への次の提案を考えてほしい」と依頼しても、AIが商談履歴や契約情報、問い合わせ履歴などを参照できなければ、有効な提案はできません。データが存在していても、AIが必要なタイミングで必要な情報にアクセスできなければ、実務では活用できないのです。
これら4つの壁は、人手をかければ一つひとつ解消することも不可能ではありません。ただし、膨大な工数とコストがかかるのが目に見えています。突破するには自動化もしくは半自動化が不可欠ですが、それを実現するサービスやソリューションがまだ世の中に十分普及していないのが現状です。
