今後のAI投資を見極めよ 改めて「AI-Ready」に向き合うとき
こうしたデータの重要性から、当社は「No Data, No AI」という言葉を掲げています。生成AIが登場してから「AI-Ready」の重要性は叫ばれていますが、2026年こそ真剣に向き合うべきです。
3年ほど前にいわれていたAI-ReadyやAI Nativeは、AIを当たり前にするという意味合いが強かったように思います。そのため、AIを導入するだけにとどまってしまった。しかし、実際にAIを導入してみてデータの壁に直面したというのが、各社の現在地ではないでしょうか。今は、ビジネスの中にAIを組み込むための環境整備として、AI-Readyの話題が再燃している状態だと捉えています。
前述した4つの壁の要素の中でも、各社が注目しているのが「コンテキスト(文脈)」です。世の中のサービスやソリューションとしても、コンテキストにフォーカスしたものが増えてきました。
ここでいう「コンテキスト」は、社内の文脈だけの話ではありません。社内に蓄積されたデータに加え、市場データや業界動向などの社外データも接続し、AIが理解したうえで業務や意思決定に活用できるよう整備することが重要です。
しかし、現時点では自社のデータ基盤におけるコンテキストに閉じています。そうすると、最初に挙げた「分断」の壁は結局解消されません。自社の中だけでコンテキストを整理しても、他のシステムとの間にある壁は残ってしまうわけです。
「あの人はこの分野に詳しい」「このプロジェクトはあの取引先と関係がある」のように、人間が無意識に持っている多次元的なつながりの多くは、社内データだけでは再現することが難しい。業界動向や外部との関係性といった情報が欠落してしまいます。この状態は、AIにとって十分な文脈とはいえないのです。社外に存在する公開情報も組み合わせることで、人間の頭の中にあるようなつながりをデータ基盤として再現できるようになります。
支援側の視点では、データのあり方に左右されずに扱えるようなサービスを最初に確立した企業が、競争に勝つことになるでしょう。米国のPalantirが、まさにこの領域を軸に事業を広げているのは象徴的な例です。
また、コンテキストというと、切っても切り離せないのが暗黙知の形式知化。私は、大きく2パターンあると考えています。1つ目は、人が担っている業務そのものを言語化し、可視化するパターンです。ここは、既に多くの企業が取り組みを始めています。
2つ目が、人間が物事を理解し情報同士を結びつける構造をデータ基盤としてどう落とし込むかというもの。この考え方は意外にも昔からあるものの、ビジネスとして運用しようとする動きが始まったのは最近のことです。この動きが活発化して形になってくると、暗黙知の形式知化がより進むでしょう。当社でも、オープンデータを構造化するオントロジー技術を開発しており、展開範囲を拡大しているところです。
これまでは「とりあえずやってみよう」と、ROIを意識せずAI活用を進め、後からROIの議論をする企業が多かったように思えます。しかし、これからはROIを見定めたうえで進めなければなりません。つまり、ここまで述べてきたデータ基盤とコンテキストの領域を踏まえて、投資を見極めるということです。次回は、それぞれのデータの壁をどう乗り越えていけばいいのか、具体的なステップを解説します。
