“勝者不在”の中でマルチAIモデル戦略は必須 では「Takane」の価値とは?
──今年の5月に発表したAnthropicらとの提携も、FDE戦略に影響はあるのか。
高橋:AnthropicやOpenAIとの提携は、まず彼らのテクノロジーへの感度を高めるため。社内のエンジニアを、Palantirだけではなく先進AI企業が提供するテクノロジーに精通させ、さまざまな角度で対応できる体制を作り上げる。すでに社内でGPTやClaudeを活用して社内の開発プロジェクトを進めているが、ここからクライアントプロジェクトにももっと展開していく。
進行中のプロジェクトがあるためリソースの調整は必要だが、そのほかに大きなハードルはないと認識している。当社のエンジニアはフロンティアAIの活用に慣れているメンバーが多く、そこまで時間はかからないのでは。
──先進AI企業とのパートナーシップ強化によって、ほかに期待することは。
高橋:これまで富士通では、ハイパースケーラーを介してAnthropicやOpenAIのAIを活用してきた。しかし、こうしたフロンティアAIへの需要が非常に高いこと、またモデルの進化をいち早く捉え、当社自身が活用してクライアントに実践ノウハウを展開していくメリットを踏まえて、直接的なパートナーシップ関係を持つに至った。AI市場の競争は激しく、まだ明確な勝者はいない状態といえる。主要AIモデルをしっかりと押さえておきたい。
一方で、マルチAIモデル戦略と並行して、自社テクノロジーの進化も当然ながら重視している。将来的に「Takane」をどう活用していくかが、非常に重要な視点となる。場合によっては、「Claude Mythos 5」「Claude Fable 5」のように、国家安全保障の観点からフロンティアAIの提供が止められるケースも出てくるだろう。そうしたときに向けて「Takane」を育てることが、日本国内の安全保障にも寄与するはずだ。
──具体的には、それぞれをどう組み合わせていこうとしているのか。
高橋:現時点で、各AIモデルにはそれぞれの特性が強く出ている。たとえばAnthropicは、大規模なコンテキストを理解しながら長時間にわたり自律的にタスクを遂行する領域で、存在感を強めている。また、OpenAIはChatGPTを中心とした巨大な利用基盤を背景に、エンドユーザーデータを多く保有しているため、エージェンティックコマースを含む新たなユーザー接点の獲得で優位性を発揮する可能性がある。
こうした中で、「Takane」の良さはやはり秘匿性だ。データの機密性を担保できる。業種特化型の推論をする際には「Takane」を活用し、汎用的な推論は他のAIモデルを活用するといった組み合わせが良いのではないか。もちろん、そのほかのAIモデルに秘匿性がないわけではないが、データ処理など、細かい点でお客様から懸念が寄せられているのも事実。特に金融機関・製造業など、社内の重要なデータや暗黙知を汎用的なAIモデルに読み込ませるリスクを考えると、「Takane」のような日本企業のAIモデルが重宝されるだろう。
──最後に、これから富士通自身がどう進化していくか。
高橋:日本企業のIT部門は、コストセンターという見られ方が強かった。しかし、このAI時代には、IT部門そのものがAIを軸とした組織に変わっていき、企業変革のドライバーとして業務効率化だけでなく成長戦略までを描くようになるだろう。当社のIT部門も、果敢にAI活用を行い、実践を通じて得た知見をクライアントに展開できる道を開拓し始めている。
当社はまさに、AIによって事業のポートフォリオをどう変えるかという議論をしている最中だ。短期的にはFDEを主体にした組織に変革していく。10年スパンで見れば、フロンティアAIを提供する企業に、当社が量子コンピューティング技術を提供しているかもしれない。どちらにせよ、これから生き残っていく上で事業ポートフォリオの大規模な変革は不可欠だ。
