AIは評価に使えるのか……成功する会社・失敗する会社の違い
藤井:昨今、人事評価や現場メンバーの成果報告にも、AIを使う事例を見聞きするようになりました。それは良いのでしょうか。
坂井:私は懐疑的です。なぜなら、部下が実は裏で努力してくれていたことが構造化されていない、つまりAIでは拾いきれないからです。上司の役割は、可視化しづらい一人ひとりの貢献をしっかりと見てあげること。それをスルーしてAIに評価を任せると、部下は「私のことは見てくれていない」と感じます。
藤井:社員のエンゲージメントを考えると、AIに評価されていることに違和感を抱く人もいるかもしれませんね。
坂井:私は過去に、上司との評価面談で、自ら報告した成果内容をそのまま読み上げられたことがあります。評価自体は良く昇給率も高かったのですが、非常に嫌な思いをしました。当時の上司は、本来の働きや人間としての自分を見ていないわけです。AIによる評価にも、同じことがいえます。
それに対して、「あなたは会議でこんなことをいってくれていた」「あのおかげで組織の雰囲気が良くなった」といってもらえたら、上司のことを信頼できますよね。特に、ポジティブな評価を伝えるときは、人情味を足したほうが良いです。
反対に、ネガティブな評価を伝えるときはAIが便利かもしれません。「あなたの努力は十分理解している」と説明した上で、AIが他部署の人のデータとも比較をした結果を客観的に伝える。もちろん、部下からすると少なからず不満はあると思いますが、同時に納得もできるはずです。
内容によっては、評価の理由をストレートに言語化すると揉めるケースもあります。そこで私は「誰かのおかげでできたことはありますか」と、評価面談の前から聞くようにしていました。そうすると、部下自身が「皆の協力があってこの成果が出た」と振り返ることができる。そうした文化を作ることも上司の仕事です。
藤井:人間にしかできない仕事ですね。
坂井:実をいうと、うまくAIを掛け合わせることもできます。たとえば、誰かがやってくれたことや相手への感謝をSlackなどのチャットに投稿する習慣があれば、蓄積されたデータをAIに読み込ませて見落とさないようにできますよね。お互いの頑張りを見る文化が出来上がっている証拠。これは、ピープルマネジメントがうまくいっているからこそ作れる仕組みです。
藤井:最後に、ご自身の中でAI時代に大切にしている考え方はありますか。
坂井:五感を研ぎ澄まして、しっかりと人間を見ることです。交流会で、名刺を配って挨拶することが目的化している人がいますよね。それは、人との縁作りとはまったく異なります。「この人は使える・使えない」と機械的に判断している。人間らしさを失っているように思うのです。人間同士の接点は、五感を活かした情動的な関係によって作られるもの。相手を知ろうとする姿勢がない交流会は、あまり意味がありません。
藤井:そうした判断は結局AIができてしまうため、機械的にしか人と接してこなかった人は淘汰されていく。最終的に、自分のスタンスを持って判断できる人が生き残っていくのですね。
坂井:そのとおりです。よくいわれますが、「AI時代だからこそ人間性が大事」という言葉が真理ではないでしょうか。
