AIは仕事を減らさない?
──『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は累計30万部を超えるベストセラーとなっています。多くの方が、働いていると本が読めない状況に課題を感じているのでしょうか。
三宅:よく聞きますね。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』では、今日も何度か出てきた「ノイズ」についても述べました。忙しい日々の中で、本が提供してくれる周辺知識や背景文脈も含めた情報(ノイズ)を面倒だと感じる人も多いのかもしれません。
しかし、実はノイズの中にこそ、面白い情報が眠っていることもある。そこで、書籍の中では「半身(はんみ)」という言葉を使って、全身全霊で労働に向かうのではなく、そういったノイズを受け入れる余裕を持てるように「半身で働く社会」になっていけないかという提案をしました。
三宅:ただ、技術によってそれが進むかというと、そうでもないですよね。メールや新幹線ができても、仕事の量は減らなかった。AIの発達後も、人の仕事が大きく減ることはないのかもしれません。
一方で、「半身的なあり方」がいいよねという考えが社会の中で広がっていけば、労働に関する制度や慣習は変わってくるだろうという期待はあります。結局、人間が変えていくしかないんですよね。
得意なことは自分で、苦手なことをAIに
──三宅さんご自身は、執筆の場面でAIをどう使われていますか。
三宅:調べたいことをとりあえずAIに投げて、参考文献はあるか、論文はあるかと聞いたりするんですけど、あんまり良い答えが返ってこないときは、結局人力です(笑)。ただ、調査のハードルは下がります。一度聞いてみて、無理だったら自分でやるし、良いものが返ってきたらラッキーだし、という感じです。
執筆でも、AIに書いてもらって「結局このままは使えないから自分で書かなきゃな」と思うモチベーションにする。そういう踏ん切りをつくるところが、今の私にはいちばん役に立っています。
AIって、9点のものを10点にするのはあんまり得意ではない気がして。1点のものを6点ぐらいにするのが、とても得意な気がするんです。だから、自分が苦手なものほど肩代わりしてもらいやすいのかなと。
──実際に、苦手なジャンルで使われることも。
三宅:あります。数字や経済学の本は数式が難しくて、飛ばし読みしていた部分もあったのですが、AIはそれを噛み砕いて教えてくれる。わからないところを写真に撮って聞いてみるのも、いいと思います。データの読み方も教えてもらいやすいですね。
──逆に、これは人にしか書けないと感じた本はありますか。
三宅:第175回直木賞を受賞した朝倉かすみさんの『けんぐゎい』(光文社)という小説は、文体に情念みたいなものがこもっていましたね。文体で圧倒されるような小説は、まだまだAIには難しいんじゃないでしょうか。
──最後に、これから書き手になりたい方も含め、AI時代の本との向き合い方についてメッセージをいただけますか。
三宅:書きたいジャンルの本をAIに調べてもらって、ちゃんと読む。インプットがあって良いものが書ける人が多いので、どういう本を参考にすべきかをAIに聞くのは、良い活用法だと思います。
AIだけ、本だけではなくて、両方使っていくのが今の時代はいちばん良い。AIで調べてみて、もう少し詳しく知りたいなと思ったら本を読む。どっちも楽しんで活用してほしいですね。
