コンタクトセンター向けAIの選択肢が、急速に増えている。パーソナライズ接客プラットフォーム「BOTCHAN」シリーズを展開するwevnalは2026年10月20日、コールセンターの電話対応を自動化する電話AIエージェント「BOTCHAN AICALL」を正式リリースした。
同日に開催された発表会には、代表取締役の磯山博文氏、「BOTCHAN AICALL」事業責任者の森川智貴氏、取締役COOの久川徹氏が登壇。電話領域に参入した背景から、プロダクトの特徴や導入事例、Web・LINE・電話の接客をつなぐ今後の構想までを語った。
2011年に広告代理店として創業したwevnalは、2018年に「BOTCHAN」をリリースし、事業会社へと転換した。Web上の接客を担うサービスとして累計800社以上に導入され、現在はAIネイティブカンパニーへの変革を進めている。
そんな同社が電話領域への参入を決めたきっかけは、チャットで成果を出していたさなかに起きた解約だった。同じ時期に、同じ理由で3件の解約が発生。顧客からは「電話で話したい」という声が上がっており、チャットだけではそのニーズに応えきれなかったという。
「BOTCHANの提供を通じて、会話品質の改善を日々高速で回してきた。その接客ノウハウを、すべて電話の領域に取り入れている」(磯山氏)
離職率は全産業平均の約2倍 コールセンターが抱える3つの課題
事業立ち上げにあたり、コールセンターの現場と対話を重ねてきたという森川氏。そこで突きつけられたのが、深刻な人材の流出だった。森川氏によれば、コールセンターの約30%で年間離職率が30%を超えており、全産業平均の約2倍にあたる。すでに人手不足は深刻で、2030年、2040年にはさらに多くのオペレーターが足りなくなる見通しだ。
人が足りなくなると、まず電話がつながらない、待たされるといった受電率の低下が起きる。需給バランスが崩れて人件費が高騰し、1コールあたりの対応コストも上がっていく。さらに、経験の浅いメンバーもすぐに現場に立たざるを得ず、オペレーターによって接客品質にばらつきが生じてしまう。BOTCHAN AICALLは、これら3つの課題の一挙解決を目指す。
正式リリースに向けては、「守り」と「攻め」の両面で体制を整えたという。守りとしては、ハルシネーション対策を含め、応対品質をスコアリングして安心・安全を見える化。攻めとしては、ベータ版運用の約1年で培ったナレッジやTipsを言語化し、成功の型として整備している。
基幹システムとつながり、責任を伴う対応は人へ
BOTCHAN AICALLによるユーザー体験には、大きく3つのポイントがある。
- 企業がすでに案内している「0120」などのフリーダイヤルを、そのまま利用できる
- 基幹システムの顧客情報や履歴をリアルタイムに参照・更新しながら応対する
- 健康被害の訴えや消費生活センターへの相談など、責任をともなう用件は有人オペレーターにリアルタイムで転送する
なかでも森川氏が強調したのが、基幹システムとの連携だ。
「目の前のお客様に応じるだけなら、これまでのIVRやボイスボットでもできた。しかし、人間のオペレーターは、基幹システムで調べてどんなお客様なのかをリアルタイムに把握しながら接客している。人間のオペレーターにしかできなかったこの役割を、BOTCHAN AICALLでも実現する」(森川氏)
一方で、すべてをAIに置き換えるわけではない。AIで解決できる用件はAIが、責任を伴う接客は人間が担う。この棲み分けを前提に設計されている。
初期構築にかかる期間は約2週間。公式サイトやFAQ、トークスクリプトや社内FAQマニュアル、熟練オペレーターの応対ログなど、企業がすでに持つデータをそのまま活用して構築できるとのことだ。森川氏は「現場ではマニュアル通りに対応しているオペレーターは少なく、経験に基づいて接客している人も多い」と語る。こうした言語化されていない熟練の技を、応対ログから言語化・抽出する技術を同社は構築した。
リリース後の改善を支えるのが、特許を出願している2つの機能だ。1つはファネル分析で、通話をステップごとに自動で区切り、どの段階で何%のユーザーが離脱したかを定量的に把握できる。もう1つは同時期ABテストで、顧客のコールフローを変えずに、たとえばオープニングトークを2パターン用意し、どちらの通過率が高いかを検証できる。この2つを組み合わせてPDCAを高速に回すことで、熟練オペレーター並みのパフォーマンスを目指すという。
「接客を測定可能にし、測定できるからこそ改善でき、だからこそ接客に再現性を持たせられる。コンタクトセンターはよくコストセンターと言われるが、これからは売上やLTV、顧客理解の震源地であり、CXの拠点にしていきたい」(森川氏)
注文完了率が45%から82%へ伸びた事例も
今回の正式リリースに先立って、BOTCHAN AICALLは2025年9月にベータ版を提供開始した。現在は20社以上が導入している。業界は通販や金融など幅広く、用途も電話注文から解約・変更の問い合わせまで多岐にわたる。エンタープライズ企業や上場企業での導入も進んでおり、なかには約700項目に及ぶセキュリティチェックを経て導入した企業もあるという。
発表会では、2つの導入事例が紹介された。
1つ目は、ある通販企業の電話注文だ。導入前、有人オペレーターによる注文完了率は45%だったが、AICALL単体では65%と人を上回った。さらに、途中で離脱した残り35%の顧客に有人オペレーターが素早く折り返し電話をかけることで、最終的な注文完了率は82%に達した。
2つ目は、解約希望の電話対応である。入電から本人確認、受付可否の判定、解約理由ごとの提案、解約や配送スキップといった最終処理の実行まで、5つのステップをBOTCHAN AICALLが一貫して担う。その対応完了率は80%。残る20%は、健康被害の訴えなど責任をともなう問い合わせとして有人オペレーターに転送しているという。森川氏は「ダークパターンは推奨しない」としたうえで、対話を通じて納得のうえ継続してもらう「継続応援率」も、有人オペレーターの7%に対してBOTCHAN AICALLは6%と、ほぼ同等の水準を実現している。
約1年の運用を通じて同社がたどり着いた原則は、業務の「完結率」を重視することだ。かつ、AI化の進め方についても、一般的な通説とは異なる考えを示した。
「簡単な業務からAI化すべきという通説があるが、我々は費用対効果を最大化するところに果敢に挑戦すべきだと考えている。複雑な業務でも、問い合わせが大量にきているのであれば、しっかり言語化してAIで再現できる形を模索していきたい」(森川氏)
森川氏は、BOTCHAN AICALLの導入目標として、2027年までに100社、2030年までに500社を掲げた。
今後の展望「AIネイティブマーケティング」
続いて登壇した久川氏は、同社が掲げる「AIネイティブマーケティング」の構想を語った。マーケティングの作業はAIが引き受け、導入企業は誰に何を届けるかを決めて価値づくりに集中する。方向性を決めるのは導入企業、それを整えるのがwevnal、作業を回すのはAIという役割分担だ。顧客接点から情報を集め、AIが分析して打ち手を実行し、その結果がまたデータに戻る。このループが回るたびに、接客が進化していくという。ただし現状では、フォームやAIチャット、電話のデータがそれぞれ別のデータベースに入っており、同じ顧客でも同一人物として特定できない。
この課題を解決するため、同社はBOTCHANを作り直す考えだ。Web上の接客を担う「Web接客エージェント」、LINEやSMS、メールで顧客にアプローチする「MAエージェント」、電話を担う「電話接客エージェント」の3つに再編し、それらを支えるデータを1つのデータベースに統合したうえで、横断するAIを組み込む。
今後のスケジュールとしては、2026年内にWeb・LINE・電話の接客データを1つのデータベースに統合する。そして2027年から、3つの接客エージェントがつながるBOTCHANを順次提供していく計画だ。
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AIdiver編集部(エーアイダイバーヘンシュウブ)
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