ソフトバンクが全社で推進する「AIエージェント」活用は、国内企業のAXの最先端を走っている。SoftBank World 2025で語られた孫正義氏の「グループ全体で10億個のAIエージェントを作る」というメッセージのもと、ソフトバンクは全社員が100個のAIエージェントを作る「AIエージェント祭」を実施し、約2か月半で250万個のAIエージェント作成を達成した。AIエージェントを組織に根付かせ、活用を最大化するための具体的な戦略、乗り越えるべき課題、そして現場リーダーが持つべき視点をどう見ているのか。同社のAX推進の一翼を担う西原万純氏に聞いた。
文系AI人材がAX推進の一翼を担う AIエージェント祭の効果
押久保:西原さんの役割について教えてください。元々は営業職で、いわゆる文系AI人材と伺っています。
西原:そうなんです。バリバリの文系AI人材です。現在はAIプラットフォーム開発本部 AIインテグレーション統括部で、統括部長を務めております。元々はチーム内の若手中心のAXをボトムアップで立ち上げ推進していました。その取り組みが会社から評価され、全社の取り組みにも関わらせていただくようになりました。
ソフトバンク AIプラットフォーム開発本部 AIインテグレーション統括部
統括部長 兼 AI Ready推進室 室長 西原万純氏
押久保:まさに「エンジニアじゃなくてもAIの仕事ができる」を体現されてるわけですね。御社は全社プロジェクトを通じて、2か月半で250万個のAIエージェント作成を達成しました。この目標設定の背景と、初期の取り組みについて教えていただけますでしょうか。
西原:ソフトバンクでは、AIエージェントの活用を強力に推進しています。まず起点となったのが、2025年の6月~8月末にかけて実施した全社プロジェクト「AIエージェント祭」で達成した250万個のAIエージェントです。
このプロジェクトでは、「社員1人あたり100個のAIエージェントを作る」ことをミッションに掲げました。その狙いは、質よりもまず「量」による文化醸成です。「とにかく、やって慣れる」という方針で、全社員にAIを日常的に触らせる機会を提供することに重点を置きました。
その結果、ほとんどの社員が目標を達成し、短期間で250万個のAIエージェントの作成につながりました。終了後のアンケートでは、「9割の社員がAIに対する理解度や活用のイメージが向上した」という結果が出ており、AIへの心理的な障壁を下げることに成功した施策だと認識しています。
野口:このAIエージェントは、社員の方々がそれぞれプロンプトを書いて、それをシステムプロンプトとして埋め込むようなものとして理解すれば良いのでしょうか。
西原:はい。それだけではなく、ナレッジファイルなども投入できて、それを踏まえたライトなAIエージェントというイメージをもっていただければと思います。
押久保:「AIエージェント祭」の終了後は、どのような取り組みが進められているのでしょうか。
西原:「日本一、生成AIを活用する企業」を目指して、次のステップとしてこの「量」のフェーズから「質」への移行を検討しています。
全社員が取り組んだ「量」による文化醸成と教育戦略
押久保:全社員が100個という高い目標を達成できた背景には、どのような教育や文化醸成の施策があったのでしょうか。
西原:単にツールをばらまくだけでは、社員はついてきません。全社の各本部からメンバーを集めたワーキングチームを立ち上げ、教育の機会も同時に提供しました。
さらに、みんなが作成したAIエージェントをシェアする仕組みや、作り方などのナレッジを共有するポータルといった動線も用意しました。これにより、周りがどういうものを作っているのかを理解した上で、自分なりに作ってみるというチャレンジができたのです。
この施策の最初の号令は、全社朝礼でソフトバンク社長の宮川が出しました。宮川が自らAIエージェントを作る様子をみんなに見せ、「社長の自分でも簡単に作れる」という事実を示すことで、「誰でもできるんだ」という文化醸成の起点となりました。
押久保:AIエージェント祭によって、各部署の業務においてどのような効果が見られましたか。
西原:この施策の良かった点は、単純にAIエージェントを作成するだけではなく、その行動によって「自分や部署の業務の棚卸しができた」という点にあります。また進める中で、コーポレート部隊や、法人営業部隊、エンジニア部隊など、AIが効果的に機能する部署が鮮明になりました。棚卸しによってボトルネックも顕在化し、次の「質」への移行がやりやすくなったと感じます。
野口:現場リーダー、つまり管理職の方のモチベーションやスキルセットによって、結果に差はでましたか?
西原:管理職のAIに対するモチベーションやスキルセットによって、多少の差はありました。「この部門は業務課題がたくさんあるはずなのに、管理職のコミット度合いが薄い」といった課題が少しずつ見えてきました。
野口:AIエージェント祭は、システム周りだけでなく人のモチベーション含めて、社内全体がAI Readyかどうかを鮮明に見渡せる機会になったということですね。
西原:その通りです。各組織の課題が徐々に見えてきました。その結果、自分たちは他社に先駆けて一歩先に進めたと考えています。私は社内・社外問わず、「AIを実装した先に、自分たちの部署の仕事がどう再設計されるのかイメージしてほしい」とよく伝えています。今回の取り組みで、どの業務のプロセスが省略化・自動化されるか、そのイメージを掴むことができました。
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押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)
立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...
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野口 竜司(ノグチ リュウジ)
AIトランスフォーメーションを推進するAIX partner(株)代表取締役。AIdiver特命副編集長。三井住友カード Head of AI Innovation、カウネット社外取締役、マイナビ Executive AI Adviserなどを現任。元ELYZA CMO / 元ZOZO NEXT 取...
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