情報戦のAI活用 社長のアイデアで設けた専門チームとは
計画の頻繁な見直しとアジャイルな開発が求められるAI推進。「情報戦」といっても良いだろう。最新技術の潮流をいち早く掴まなければ、開発リソースが無駄になりかねない。島野氏自身、日々の情報収集を欠かさない。
「特にXは情報の鮮度が高いと感じています。AIテック企業のトップやCxOは一通りフォローし、毎朝必ずチェックしています」
三菱UFJフィナンシャル・グループの情報収集手段として、特徴的な取り組みがある。それが「AIインテリジェンスチーム」の存在だ。チームメンバーは海外を含む世界中のAIトレンドを収集し、経営陣に直接届ける役割を担う。社長自ら発案し、2024年度に本格始動した。経営陣のAIに対する熱量がうかがえるだろう。
AIインテリジェンスチームの人数は非公開だが、海外現地へ向かい直接ネットワークを築くメンバー、最新論文や学会情報を精査するメンバー、そして海外のAIスタートアップ企業の動向を追うメンバーで構成される。メンバーはほぼ中途採用で、AIの研究職出身者も在籍するという。彼らはNDA(秘密保持契約)を締結した上で、海外の金融機関やAI企業と現地で直接対話し、得られた知見を3ヵ月に一度、社長をはじめとする経営陣へレポーティングしている。
海外の事例を現場に取り入れるかどうかの判断基準は「時間軸」だ。まず数ヵ月以内に具体的な業務で使えるイメージが湧くかどうか。将来的な活用の可能性が高いものは、あえて様子見のステータスでウォッチし続ける。
「社長報告会では、経営陣から非常に突っ込んだ質問も飛んできます。技術的に深い内容や、我々専門チームでも即答できないような鋭い論点も少なくありません」
それだけ経営レベルで情報をキャッチアップし、自分事としてAI活用を考えているということだろう。島野氏自身も実際に米国や中国などの現地へ足を運ぶが、日本の現在地を認識させられるという。
「やはり、日本のAI活用は遅れが目立つというのが正直なところです。米国はもちろん、中国も速いスピードで進化を遂げています。外資系の金融機関に話を聞くと、AIに対して大胆な投資を行っています。動きが速く、次々と具体的な活用事例が生まれているのです。一方で、日本企業、特に銀行は成果物に求められる品質レベルが高い。この品質へのこだわりが、実装の難易度を上げている側面はあるかもしれません」
