Copilot Coworkをあえて全社展開しない理由
辻:そうやってAXを進めながらも、どこかで社員たちの考える力が弱まってしまうのではないかと不安も感じているのです。
当社はMicrosoft環境であるため、Microsoft Copilotを社員に配布しています。少し前にClaudeのCoworkが話題になりましたが、MicrosoftでもCopilot Coworkが一時的に無償で試せるプログラムがあり、私も実際に使ってみました。本当に「すごい」の一言でしたね。
通常であれば、導入にあたってIT部門での評価に時間がかかりますが、Copilot Coworkは数日で評価を終わらせ、経営幹部に使ってもらいました。使い方を教える時間がなかったため“教育ゼロ”だったにもかかわらず、皆さん使いこなしてくれました。Microsoftの方に「役員から部長まで、Coworkをこんなに使い倒している企業はSUBARUぐらい」といわれたほどです(笑)。
しかし、雑な依頼でもそれなりのことができてしまうがゆえに、自ら考えたり判断したりする機会が少なくなる危険性も感じました。「AI依存」といえばよいのでしょうか。そのため、Copilotのライセンスは増やしている一方で、Coworkの利用には制限を設け、全社展開はしていません。

森:その問題は重要なご指摘だと感じます。そして、非常に根深いとも思います。
ある調査によれば、生成AIを使ってエッセイを書いた人の多くが、書き終えた直後に自分の文章をほとんど思い出せなかったというのです。つまり、AIでアウトプットの数が増えたとしても、数年後に何も自分のスキルになっていない可能性もある。AIを使いこなして生産性を上げることも重要ですが、それと同時に私たちは人材育成の課題と向き合っていかなければなりません。
AIが提供するものは“正解”です。しかし、そうではなく、あなた自身のもう一つのアンサーがほしいと。この姿勢が、AI時代には求められているのではないでしょうか。
辻:そう思います。何かを作り上げるとなると、やはり人間の力が必要です。
森:辻さんが懸念されていることには、強く共感します。当社も、新人社員も含めて積極的にAIを使う方針ではありますが、注意していかねばならないと考えています。プロンプトをどう変えたのか、AIのアウトプットの何を削除すべきだと思うのかなど、使い手に多くを問うていく必要がある。自らのアイデアを足すことも大切です。AIは大量の情報を学習して網羅的にアウトプットを生成するため、何を削るかは重要な視点です。
辻:AIの答えの何を採用するかで、使い手の力量が測れますね。
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