AIエージェントからの問い合わせに、どう答えるか
今後の推進役となるのが、グループのCoE(Center of Excellence:中核的推進組織)である「AI-HUB」だ。ここでのR&Dの進め方が、同グループのAI戦略でもっとも示唆に富む部分かもしれない。
AI-HUBはまず、技術進化が事業に与える影響を分析する。前提に置いているのは、将来的に各社独自のAIエージェントが自律的に連携して業務を担う姿である。
次に、AI時代に選ばれるために必要な仕組みを特定する。具体例として挙がったのが、AIエージェントからの問い合わせに迅速かつ正確に応答する仕組みの検討だ。問い合わせてくる相手が人間ではなくAIになる前提で、応答の設計を考え直すという発想である。
そのうえで、各社の戦略立案と開発・実装を支援する。自社AIエージェントの開発に加え、正確に動かすために必要な商品・約款などのデータ整備を強く後押しする。
この方向性は、グループの動きとも重なる。東京海上HDは2025年9月にOpenAIとの戦略的連携を開始し、営業戦略の策定から保険事業のオペレーションまで、生成AIを業務基盤の一部であるAIエージェントとして組み込む取り組みを進めている。2026年4月にはグループCAIO(AI戦略総括)を新設し、楠谷勝氏が就任した。組織と外部連携の両面で、AIエージェント前提の体制づくりが進んでいる。
自社の情報は、AIから読める形になっているか
企業IT部門にとって持ち帰るべき論点、最後のデータ整備のくだりにありそうだ。
AIエージェントが商品を比較し、顧客に代わって問い合わせる時代を想定するなら、自社の商品情報や約款、サービス仕様が、AIから検索・解釈できる形に整っているかどうかが、そのまま選ばれるかどうかを左右する。人間向けに最適化されたPDFやWebページのままでは、応答の土俵に上がれない可能性がある。
東京海上グループが「ビジネスプラットフォーム」として自社の提供価値を整理し直しているのは、この土俵づくりにあたる。顧客データの整備は多くの企業が着手済みだが、自社が提供できる価値の側を機械可読にする作業は、まだ手つかずの企業が多いのではないか。二つの基盤を対で設計するという発想自体が、他業種にも応用の利く示唆といえそうだ。
