マイナビが見出した「ミドルダウン」戦略 なぜトップダウンではないのか
筆者の所属するAI推進チームは、施策を大きく転換させた。ボトムアップでの施策は継続しつつも効果が低かった層には、管理職を起点とした「ミドルダウン」型施策を展開する方針だ。
なぜトップダウンでもなく、ミドルダウンなのか。
もちろん、経営層が「AI活用を推進せよ」と号令をかけることはできる。実際、マイナビでも経営戦略としてAI活用が明確に位置づけられている。しかし、経営層の号令だけでは「何の業務に」「どのように使うか」までは届かない。
また、営業部門と制作部門では業務の粒度が異なるため、活用すべき場面も違う。全社一律の指示では、現場は「総論賛成、各論不明」の状態に陥りやすい。
何よりも、AI活用を全社浸透させる最も効果的な方法は、業務フローの中に組み込むことだ。そして、業務フローを設計して「この作業はAIに任せよう」とメンバーに具体的な指示を出せるのは、日々の業務を最もよく知る“現場の管理職”に他ならない。
ボトムアップ型が「AIに興味がある人、手を挙げてください」と呼びかけ、手を挙げた人だけが学ぶ構造なら、ミドルダウン型は「来週の会議から、議事録のたたき台はAIで作ってください」と管理職が指示する構造だ。関心の有無にかかわらず、チーム全員が動き出す。
もちろん、ミドルダウン型はボトムアップ型を否定するものではない。ボトムアップでリーチできなかった層を補完するための施策であり、両輪の戦略である。
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3,000名全員に届けるためには、何が最適だったのか?
管理職に「AI活用が必須」と言い切ること自体、社内でも議論を呼んだ。「忙しい管理職にさらに負担をかけるのか」「やらされ感で受講しても意味がないのでは」──そうした懸念は推進側にもあった。それでも踏み込まなければ、「意欲のある人だけが学ぶ」構造の繰り返しになる。だからこそ、覚悟をもって「管理職でのAI活用は必須」と判断した。
その上で、実施形式についても検討を重ねた。集合研修は対話やグループワークができる反面、約3,000名全員での受講が現実的でない。事業部や職種によって繁忙期も異なるため、全員が同じ時間に集まることは不可能に近いからだ。一方、eラーニング形式であれば自分のタイミングで受講でき、実践的なワークやコメント投稿も可能となる。
こうした判断の下、2026年2月、管理職約3,000名を対象に受講必須のeラーニング「AI時代の管理職に求められるマインドと活用術」の全社展開を開始した。
だが、eラーニングの受講を必須としただけで、すべての管理職が変わるわけではない。忙しい管理職が60分のeラーニングを最後まで受講した上で、自分のチームでAIを活用していく──そこまでを実現するには、コンテンツ設計そのものに仕掛けが必要だった。
では、具体的にどのような仕掛けを施すことで、eラーニングによる変革は成功したのか。後編では、“受けて終わりにしない”ための設計思想と、行動変容を生んだ3つの工夫を紹介する。
