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AIdiver Press

管理職の42%がAIを使えない──マイナビが「全管理職必須研修」に踏み切った理由

ボトムアップ施策の限界 管理職約3,000名への“必須化”に至るまで

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 「AIツールは導入した。社内勉強会も開いた。でも、使っているのは一部の社員だけ」──生成AIの業務活用が広がる中、こうした悩みを抱える企業は少なくないだろう。筆者が所属する、日本最大級の総合人材情報サービスなどを提供するマイナビでも、全社の生産性向上を掲げる経営戦略のもと、2022年からAI活用の推進に取り組んでいる。「AI民主化」をキーワードに、数年にわたるボトムアップ型の施策を展開し、一定の成果を収めてきた。しかし、取り組みを進める中で見えてきたのは、AI活用が「意欲の高い人」に偏り、全社への浸透には“構造的な壁”があるという現実だった。特に深刻だったのは、現場の意思決定を担う管理職の活用状況だ。本稿(前編)では、なぜ管理職約3,000名への“eラーニングの必須化”という判断に至ったのか、その背景と意思決定のプロセスを振り返る。

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2名で始めた「AI民主化」──草の根活動は何を変えたのか

 2022年、マイナビでは、わずか2名体制でAI推進業務をスタートした。デジタルテクノロジー戦略本部 AI戦略室に属しながら、「草の根活動」「伴走支援」「ツール整備」「ガバナンス整備」を4つの柱に据え、全社のAI利活用を推進する専門チームだ。

AI推進活動の時系列まとめ
AI推進活動の時系列まとめ
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 一時は専任者1名と兼任者1名の実質1.5人体制に縮小しながらも、活動の手は止めなかった。ガイドライン策定、全国26拠点への対面相談会、実践型研修「マイナビ文系AI塾」への900名超の応募、ノーコードAI開発プラットフォーム「Dify」の全社導入……4年間で積み上げた施策は、たしかに数字を動かした。「Microsoft Copilot」の利用率は44.5%から93%に上昇し、専門チームも2025年末には6名へと拡充している。

 まさに、数字だけを見れば順調そのものだ。しかし、この成果の裏側では「ボトムアップだけでは超えられない壁」が見えはじめていた。

なぜAIは「熱心な人」にしか届かなかったのか

 AI推進チームが直面した壁が数字として突きつけられたのは、2025年後半のことだった。

 全社員約8,000名を対象に、AI活用レベルを5段階で測定する調査を実施した(人材育成部主導の「デジタルポータブルスキル[1]学習プログラム(DPS)」の一環として、複数本部が共同設計したもの)。

AI推進活動の時系列まとめ
社内全体のAI活用段階分布
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 調査結果は厳しいものだった。全社調査(n=7,478)で「未活用」9%と「受動的利用」35%──あわせて44%がAI活用が未定着の状態だったのだ。何年もかけて草の根活動を続けてきた中、AIが定着していないという事実は、推進チームにとって重たい現実となった。2024年度時点で「日常業務活用以上」と答えた社員は53.7%。2025年度の目標である80%に向けて、残り約1,100名の引き上げが必要な状況だった。

 このときの課題は、大きく2つに整理された。一つは、DPSの認知が弱いために管理職の巻き込みが不十分なこと。もう一つは、AIの未活用層と受動的利用層で障壁が異なっているにも関わらず、一律的な施策で対応していたことだ。

 いわゆるボトムアップ型の施策は、任意参加となるため、情報感度が高い社員やデジタルに関心のある社員には確実に届く。しかし、「忙しくて参加できない」「自分には関係ない」「何から手をつければいいのかわからない」という層にはリーチしにくい構造をもっていた。

[1] マイナビでは『職種を問わず、業務の効率化や生産性向上につながるデジタルツール(IT・AI)を効果的に活用するための基礎スキル』と定義している

「AIをまとった部下」にどう向き合うか──管理職42%が未活用という現実

 さらに、深刻な状況にあったのが管理職だ。調査では、管理職の42%が「未活用・受動的利用」にとどまっていた。管理職自身がAIを使いこなせなければ、部下へと活用を促すことが難しいだけでなく、管理職経由で浸透させていくという施策も機能しない。

管理職層のAI活用段階分布
管理職層のAI活用段階分布
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 そして、この問題は思わぬ形で表面化した。人事部門から「新入社員のAIの使い方について、事業部から指摘されている」と相談が届いたのだ。上司の質問をそのままAIに投げ、返ってきた回答をそのまま送る。掘り下げられても、自分で考えていないので答えられない。そもそも上司の指示の背景にある意図──「この質問の本質は何か」「経緯を踏まえたときに求められているのは何か」──を考えることなく、表面的な言葉だけを受け取っていた。

 これは営業の現場でも同様だった。初訪問する顧客へのアポイントに向けた情報の収集や提案企画をAIに丸投げし、エビデンスが曖昧なままタスク完了としてしまう。その中には、上司や先輩への連絡文面までAIの出力をコピペしているケースもあるなど、「判断基準の基礎が育たない」という現場の危機感は切実なものだった。

 いわば、「AIをまとった部下」。この問題の本質は、部下のスキル不足だけにあるのではない。そもそも管理職がAIを使いこなせなければ、「ここはAIに任せていい」「ここは自分で考えるべきだ」という判断基準を示せない。また、部下のアウトプットがAIの出力そのものなのか、それとも本人の思考を経たものなのかを見極めることもできない。

 まさに、管理職のAIリテラシー不足は、チーム全体の質を下げてしまうような問題に直結するリスクだった。

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マイナビが見出した「ミドルダウン」戦略 なぜトップダウンではないのか

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この記事の著者

清野 凌(キヨノ リョウ)

株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 AI推進課 課長。製造メーカーのシステム子会社でセキュリティやネットワーク領域のシステム開発に従事した後、2019年にマイナビへ入社。データ分析やAI商材の技術営業を経て、2021年よりAI推進業務を担当。「AI民主化」を掲げ、全社員約8,000名を対...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://aidiver.jp/article/detail/602 2026/07/03 08:00

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