AIに聞いてから問い合わせる時代、人間の役割は?
──まず、コンシューマーセンターについて教えてください。
資生堂ジャパン コンシューマーセンター 一木泉氏(以下、一木):お客様対応の部門自体は1968年発足し、これまで58年の歴史があります。今あるコンシューマーセンターは資生堂ジャパンに設置されており、日本国内のお客様に電話やメール、チャットで直接対応しています。本社機能の中で、店頭以外にダイレクトにお客様と関わる組織はここだけです。集まってくるお客様の声は、年間15万弱。コンシューマーセンターに所属する約60名のうち、半分が「コミュニケーター」としてお客様への対応を担っています。
──窓口としての役割が中心なのでしょうか。
一木:それだけではありません。コンシューマーセンターで解決できないことは、全国の事業所や海外拠点とも連携する仕組みとなっています。お客様の声を届けるハブ機能を担っているのです。
店頭に立つパーソナルビューティーパートナーも、全員がタブレットを持っていて、そこに入力されたお客様の声が、翌日にはコンシューマーセンターのVOCシステムへ一元的に集まります。窓口の声も店頭の声もすべてここで分析し、社内へ届けています。中には耳の痛いご意見もありますが、それを受けてどうすべきかを提言することも、重要な役割の一つです。
──これまで、質問が24時間できるチャットボットサービスも展開されてきました。デジタル技術の活用には積極的な印象ですが、AIの台頭による変化はありますか。
一木:お客様の問い合わせ内容自体が変わってきています。FAQなどにも記載している簡単な内容は、皆さんAIに聞いているのでしょう。そのため、窓口に届くお問い合わせの多くは、AIでは解決できない複雑なことやパーソナルなこと、そして感情をともなうご意見です。実際に「AIに聞いたがわからなかった」とお問い合わせに行きつく方もいます。
そうすると、対応する側にも高いスキルが求められます。解決の難易度が上がり、1件ごとにかかる時間が長くなるのです。そのため、簡単な質問の解決はAIやFAQに任せ、人間のコミュニケーターは気持ちに寄り添う対応にこそ時間を使う。そう切り分けていきたいと考えています。
──AIそのものへの向き合い方は、どうお考えですか。
一木:コンタクトセンターは、電話の仕組みも顧客情報の記録も、システム化が比較的早い業界です。特に、お客様の「言葉」の分析はAIと非常に親和性が高く、1件1件読むだけでは拾えない定量的な分析も可能となっています。ただ、対お客様となるとハルシネーションの懸念がまだ拭えず、当社としてはトライアルを続けている段階です。
一方、コミュニケーターの支援や情報分析には積極的に活用しています。全社でAI活用の機運が高まっている点でも、追い風です。コールログは全社へ展開しているため、コンシューマーセンターのメンバーに限らず、誰でもお客様の声を分析できる環境となっています。分析の基本フォーマットも、私たちから全社へ共有しています。その上でコンシューマーセンターの分析チームは、他部門よりも高度な分析に踏み込んでいます。
