バックオフィスは70%AI化も可能か どうなる?リソース配分
──お客様対応への本格的なAI活用は、ハルシネーションの懸念からまだトライアル段階とのことでしたが、AIと人の役割分担は今後どうお考えですか。
一木:AI活用の範囲を、大きく「対お客様」「情報分析」「対応者の下支え」の3つで整理しています。対お客様では、「この商品はどこで売っているのか」「このキャンペーンはどこに聞けばよいか」といった1対1で答えられる質問はチャットボットに任せ、より精度高く、かつスムーズに答えへたどり着けるようにしていきます。一方で、複雑なご相談やお気持ちに寄り添う対応はまだ人が担うべき領域です。
情報分析においては、大量のデータから大まかな傾向をつかむためにAIを活用しています。その中でどこを深掘りすべきか気づきを得ること、「N=1だが見逃せない」という価値ある一声を拾う判断をすることは人の役割でしょう。また、対応者を下支えするための資料検索にはさらにAIを活かしたいところですが、人が必ずアウトプットが正しいかを確かめ、AIを育てていかなければなりません。

一木:おおまかにいえば、情報分析をはじめ、お客様対応をしないバックオフィス領域の70%はAIで代替可能と考えられますが、30%は必ず人の手が必要となります。お客様対応はそこまでは活用範囲を広げられず、おそらく50%程度が限界でしょう。
特に当社の商品は化粧品であるため、感性のお問い合わせが多いです。「私の肌に合うのはどれか」というパーソナルなご相談は、AIに聞いても「本当にこれで合っているのか」と確かめたい方がほとんど。最後にお客様の背中をそっと押す役割は、必ず人に残ると考えています。
──仮にAIがバックオフィス領域の70%を担い、人手が求められる作業が30%になったとき、余ったリソースをどう転換するのですか。
一木:単に「余ったから人を減らす」ことはしません。その分、一人ひとりのアウトプットを増やしたいと考えています。
私たちは資生堂ジャパンの一部門ですが、資生堂は本来、全世界のお客様に価値を届けられる会社です。お困りごとを解決するだけでなく、もう一歩先の提言──たとえば商品やサービスにとどまらず、資生堂という企業そのものの価値を高めるところまでを目指したい。
私自身、コンシューマーセンターが「プロフィットセンターへどう進化できるか」を、何年も前から考えてきました。ECや物流の窓口であれば、コンバージョンで利益が見えやすいですが、コンシューマーセンターはコーポレート窓口であるため、直接売上にはつながりません。それでも、単に商品の質問に答えるだけでなく、「この会社の商品をもっと使ってみたい」と信頼を高めていくことが、私たちにできることだと思っています。耳の痛い声も含め、お客様が求めるものと資生堂が進む道にギャップがないか。お客様の声を羅針盤に、資生堂を発展させていく部門へ成長していきたいです。
