100兆個のエージェントと10億体のヒューマノイド
孫氏は1年前の同じ講演で「AIエージェント元年」を掲げた。今回はその先を描く。地球上で100兆個のエージェントが24時間休まず稼働し、エージェント同士が互いに通信し合う世界だ。
「人間中心の社会ではなく、エージェント中心の社会になると思った方がいい」と語り、今までは人間と人間がコミュニケートしていたが、これからはエージェントとエージェントがやり取りする未来を予想した。
物理世界も同様だ。エージェントがヒューマノイドに宿れば、ロボットが自らの判断で動き始める。孫氏はヒューマノイドが10億体生まれると見る。24時間稼働で人間30億人相当、賢さと緻密さを加味すれば1体で10人分、実質100億人分の労働をこなす。「肉体労働の主役が、人類史上初めて人間からヒューマノイドに移る」と語った。
これらを動かすデータセンターの規模を、孫氏は「3テラワット」と断言。今日の世界の発電量の1.8倍にあたり、24時間365日稼働し続ける。ロボット分も含めれば消費電力はおよそ倍になる計算だ。
孫氏は「電力が倍になったら大変だと言う人がいるが、これまで倍になるのに約20年かかった。15年で倍になっても驚くほどではない」とし、当面の主役はガス発電、そして2040年にはクリーンで安全な核融合(フュージョン)が取って代わると見立てた。
「クエッタ(quetta)を知らない人がAIを語るな」
演算能力の話に移り、孫氏は会場の経営者に「エクサ、ゼタ、ヨタ、ロナと、桁を表す単位をどこまで知っているか。ゼタの次を知っている人がいたら、私の腕時計をあげます」と場を沸かせつつ、最新の桁「クエッタ(10の30乗)」を紹介した。2040年のAIデータセンターは、このクエッタ級のとてつもない演算能力を備えることになるという。
では、それにいくらかかるのか。孫氏の答えは「年間5兆ドル、800兆円」で、この規模の投資を毎年しても経営は成り立つと言い切る。「世界GDPの20%、7,000兆円の売上が毎年あるなら、800兆円を使っても誤差だ。利益率50%でお釣りが出る」という。売上の読みがあるからこそ、投資の規模が計算できる。ビジョンと収益とインフラコストを一体で考える姿勢を、孫氏は繰り返し強調した。
