組織図へのAIエージェントの組み込みが具体化しつつある
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、CES2025で「IT部門が人事部門になる」と語った。この論点が、いま一段と具体化している。
「人事部門という表現が適切かは別として、求められるのは業務をどう設計するか、デザインするかということだと思います。どういう業務があり、プロセスがどう流れ、どこにチェックポイントを入れるか。それは人がやるほうがいいのか、AIがやるほうがいいのか。その判断を設計できる人が必要になります」(福田氏)
実際、日本でもCAIO(最高AI責任者)が人事を兼務する動きが出始め、米国ではGTMエンジニアなどの職種も登場してきている。業務領域ごとに、業務設計をリードするマネジメント、オペレーションに落とす担当、エンジニアを置き、実行プロセスを観察しながらAIに学習させ、徐々に人からAIへ業務を移す。そんな三位一体の組織体制を取る企業が増えているという。
ポイントは、一体のエージェントに何でもやらせないことだ。「万能なエージェントは作れないので、どの区切りでエージェントを作り、どこに人を入れるかは、かなり緻密な設計が必要です。メンバーシップ型のような形で機能するAIは作れない。ジョブ型的な発想で設計・分解していくことが、ますます重要になります」と福田氏は指摘する。
システム予算と人件費を区別しない時代が近づく中で、市場が急速に拡大する期待の裏側には、この設計の巧拙という現実的な条件があるわけだ。
企業の資産は「人的資本」と「トークン資本」の2種類へ
講演の核心は、経営の新しい論点「人的資本とトークン資本」だ。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが2026年6月にXで発信して以降、経営層の中で話題になっている。
企業の資産は、知識・判断・創造性を担う人的資本と、自社が構築・所有するAIシステムと能力であるトークン資本の2種類になる。そしてトークン資本が増えるほど、人的資本の価値はむしろ高まるという見立てである。「人の方向づけがなければ、計算資源は空回りするだけだ」というナデラ氏の言葉が、その本質を端的に表す。
福田氏も同意しつつ、一歩踏み込んだ。
「人が大事というのはその通りですが、どういう人が大事なのかが変わってきます。大事なのは、業務をデザインできる人です」(福田氏)
AIエージェントを複利で賢くするには、実行した結果がなぜそうなったのかという問いから原理原則を見つけ、次の学習につなげる必要がある。そのために業務のプロセスを特定し、動かす人やスキルを当てはめていく。
これを設計できる人こそがAI時代の人的資本であり、与えられた仕事をこなすだけの仕事は、エージェントに置き換えられていく可能性がある。インターネットの登場で「情報を持つ人」の価値が薄れ、「思考できる人」が残ったのと同じ変化が起きるというわけだ。
