企業のミスでも顧客の過半数が指摘しない VOCを失うリスクも
多くの人が、カスハラを悪質なクレームだと捉えているはずだ。その認識が社会に浸透したことで、「自分自身がクレーマーに認定されるのではないか」と懸念する顧客の心理が見えてきた。
Channel Corporationの調査では、企業側の明らかなミスに遭遇した人のうち、52.3%がその指摘や返金請求を諦めたという結果が得られている。その理由として「自分の言い方が攻撃的だと思われないか不安」と回答した人は33.0%。本来、企業にとって貴重なフィードバックとなる意見を持つ顧客までもが、口をつぐみ始めているのだ。
「突然、自分が加害者になってしまうかもしれない──そう思うと企業に伝えることを躊躇してしまいますよね。顧客は正当な声を飲み込み、従業員は静かに消耗していく。これこそがカスハラ問題の本質です。今、この二重損失を止めるタイミングにきています」(山本氏)
一見するとクレームに見える内容でも、CXや商品・サービスを改善する重要な示唆が隠れている。顧客の声(VOC)を全社へ還元していくことも、コンタクトセンターが持つ本来の価値だ。問題は、オペレーターの負担を軽減しながらVOCをどう収集していくかである。
「withでは、お客様とAIエージェントとの会話内容を日々チェックしています。たとえば、何度もやり取りが続いてお客様の温度感が高くなってしまった場合。よく分析してみると、1回目の回答がお客様に寄り添えておらず、それが原因で長引いているケースがあるのです。そうしたときは、伝え方やテンプレートの文章そのものを大きく変えるなど改善を行っています。どんなクレームにも、サービス改善のヒントは含まれていると考えるからです」(藤平氏)
感情をともなうクレームを冷静に分析できるのも、AIエージェントならではのメリットだろう。調査でも、65.2%が「人間相手は気まずいが、AIを介してなら伝えたい」とAI活用に前向きだった。顧客はAIを企業が用意した"壁"だとは思っていない。むしろ、自分の言いたいことを冷静に翻訳してくれるパートナーとして期待していることがわかる。
もちろん、どうしても人に直接伝えたいという顧客もゼロではない。そこでALFは、有人対応へのスムーズな引き継ぎに加え、オペレーターへの回答アシスト機能も備えている。
「ALFがオペレーターにより良い答え方を提案します。どんな企業でも人が矢面に立つ場面は必ず発生しますが、心理的な負担を最小限に抑えることは可能です。“AIか人か”の2択で考えるのではなく、ハイブリッド型の対応が重要となります」(山本氏)
また、顧客の感情がよりストレートに出やすい電話でもALFの強みが活きる。通話の自動録音とテキストへの変換、要約が標準機能として備わっており、メール・チャット・電話のどのチャネルを通じた問い合わせでも、同じ場所に記録が残る仕組みだ。
「やり取りの内容は、CRM基盤を介して顧客情報と紐づいて蓄積されます。それにより、『どのお客様が、どの体験の何につまずいたか』までデータ化することができます」(山本氏)
そうして蓄積されたデータをもとに改善施策を打ち、そこからまた新たな顧客のフィードバックが得られると、良いサイクルが自然と回り始める。守りのために整えた体制が、そのまま“攻め”のコンタクトセンターへの転換を後押しするというわけだ。
「現在、Channel Corporationでは、AIが電話対応を行う『VoiceALF』の提供も開始しています。従来のAI電話は、顧客の問い合わせに対して元々用意していた回答を振り分けるような機能がメインでした。当社のVoiceALFは、問い合わせに最適な回答を都度生成し、ご案内することが可能です。回答のみならず、注文対応・キャンセル対応が必要な場合も自動化できるため、問い合わせの効率化を超えてさまざまな活用の余地があります」(山本氏)

