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【動画】400年続く百貨店が語るAXの現在地 大丸松坂屋が見据えるAIと人で創る“おもてなし”の未来

大丸松坂屋百貨店 林 直孝氏インタビュー

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ABテスト型はAIへ、共感型は人間へ

押久保:無人レジが縮小する動きなど、テクノロジーへの揺り戻しもあります。日本の小売現場でテクノロジーとおもてなしをどう融合させるべきでしょうか。

林:中国でレジなしの無人店舗を複数視察した際、テクノロジーとしては素晴らしく、レジに並ばなくていい体験も魅力的だと感じました。ただ一方で、我々が展開する百貨店やショッピングセンターでは、接客を介したショッピングの体験がなくならない価値だとも再確認しました。AIを使っておもてなしの精度をどう上げるか。人とAI・ロボットのハイブリッドで体験を作っていくことが、日本の小売業に求められるポイントだと思います。

押久保:接客スタイルとAIの役割分担について、どうお考えですか。

林:接客の研修に足を運ぶ機会が増えて、気づいたことがあります。男性の販売員の方々の接客スキルは、ウェブの業界でいう「ABテスト」を高速で回すような、お客様の好みをこちらかそちらかと絞り込んでいく、スマートな接客が得意な傾向にあります。

 一方で女性の販売員の方々は、お客様のおっしゃることに寄り添う「共感型」の接客が得意な傾向があります。前者のABテスト型はAIが得意な分野です。後者の共感型は人間にしかできない接客の力です。接客のどの部分にAIを使えばより良くなるかを切り分け、人間が持つ共感の能力を磨いていくことが信頼構築につながります。

押久保:「セレンディピティ」という言葉も使われてきたとのことですが。

林:「デジタルSCプラットフォーム」の構想をテナントの皆さんにお伝えする際に、「セレンディピティ(偶発的な出会いによる幸福感)」という言葉を使いました。デジタルやAIを使って偶発的な出会いをどれだけ作り出せるかが、日本のおもてなし接客をさらに高めるための鍵になると思っています。また「ウェブ接客」という概念も提唱してきました。来店してからが接客のスタートではなく、お客様がスマホを見ている日常から接客は始まっている、という考え方です。

400年の本質を磨き、AIで突き抜ける

押久保:AIが当たり前になる中で、選ばれ続ける企業と淘汰される企業の差はどこにあるとお考えですか。

林:一つは、接客のどの部分にAIを使えば良くなるかを突き詰められるかどうかです。そしてもう一つ、それ以前に「本質的な価値」を磨き続けられるかどうかです。

 大丸と松坂屋は、ともに江戸時代に創業した呉服屋をルーツに持ちますが、時代が変わっても「お客様の潜在的なニーズを探り、それに合う商品を提案・開発する」という本質的な価値は変わりません。AIを使えば便利になりますが、AIに依存して本質を磨くことをおろそかにしてはいけない。「より良い顧客体験とは何か」を問い続け、AIを活用してそれを進化させられる企業が、今後も伸びていくと思います。

押久保:現場でDXやAXに取り組んでいる方々へメッセージをお願いします。

林:あるCIOの方がおっしゃっていた「DXとは、デジタルを使ってCX(顧客体験)とEX(従業員体験)を向上させる営みだ」という言葉は、AXになっても変わりません。従業員のEXを上げるためにAIをどう使うか。そのためには、今までの業務をAIに任せて「余白」を作ることが不可欠です。「これはもうやらなくていい」と明示して設計するのは経営の役割です。

 一方で、CXを上げるためのヒントは現場にあります。経営と現場がバラバラに動くのではなく、同じ方向を向いて歩みを共にし、CXとEXを同時に高めていくことが、これからのトランスフォーメーションを成功させる鍵だと思います。

押久保:最後に、これからのテクノロジーの展望について一言いただけますか。

林:今はPCやスマートフォンでAIを使う時代ですが、今後はスマートグラスのような別のデバイスを通じて、スマホではできなかった体験設計が可能になるかもしれません。我々小売業も、そうした未来を常に考えておく必要があると思っています。

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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