AIガバナンスを整備する“理由”は明確か 「なんとなく怖い」が足かせに
3つ目の論点は、セキュリティとガバナンスだ。多くの企業では、情報システム部門がAI活用のガイドラインの作成から着手するだろう。入力してはならない内容の基準など、様々なルールを設けてから社員にAIを配布する流れが一般的だ。
しかし、長谷川氏は「社員が自身のスマートフォンやPCから自由にAIにアクセスできる以上、実質的に制御することは難しい」と指摘する。肝心なのは「具体的に経営層が何を懸念しているのか」を明確にすることだという。
「『なんとなく怖い』という理由で、導入に踏み出せない企業もいます。実際、AIに限らず、新技術への過剰な不安はこれまでもくり返されてきました。かつてYahoo!メールが登場した際も、『インターネット上のメールは傍受できる。企業が使うものではない』との声がありました。しかし、今や誰もが個人情報を当たり前のようにメールでやり取りしています。クラウドにも同じことがいえます。傍受の可能性が完全に消えたわけではないものの、情報量が膨大で、狙い撃ちされない限り現実的には起こらないのが実態です」(長谷川氏)
また、AIエージェントの自律性に対する懸念もある。予期しない動きをすることへの不安もあるだろう。
たとえば長谷川氏は、クライアントから届いたデータに基づいて、請求書の発行から送付まですべてをAIエージェントで自動化している。もちろん、最初から完璧にAIエージェントが動くわけではない。そのため、当初は毎回人の目で確認し、数ヵ月問題がなければ確認工程をなくす。さらに同じ処理を3つのAIエージェントに実行させ、結果が一致すれば次へ、差分が出れば再実行、それでも解消しなければ人へ報告するフローを組み、確度を高めているという。
進化が凄まじいAIプラットフォーム 選び方の最適解は
最後の論点は、AIプラットフォームの選び方である。LLMエンジンで見れば、企業利用では「Anthropic」「OpenAI」「Google」が御三家といって良いだろう。モデルの優劣はその時々で変わるが、資料作成のような単純用途であれば大きな差がでることは現時点であまりない。
一方で、企業として大きな成果を得るには、基幹システムのデータとの連携が不可欠だ。データを統合・融合しながらAIエージェント化を進めなければならない。その観点で長谷川氏は、「GCP(Google Cloud Platform)」に目を向ける。
「Geminiを選ぶべきということではありません。基幹システムを統合・融合するためのAIプラットフォームとして、GCPが適しているケースが多いという考えです。Google Cloud上では、AnthropicのClaudeも呼び出せます。最適なモデルを都度選ぶことも可能です」(長谷川氏)
基幹システムに近い場所で、いかに大型のAIエージェントシステムを構築していくか、議論はすでにそのフェーズに入りつつある。既存システムとの親和性も、重要な視点というわけだ。
ここまで、長谷川氏は自身の経験を踏まえた日本企業の“あるある”を提示してきた。本セッションで示された示唆は、メイン業務へのAIエージェント導入に踏み出す企業にとって、実践的なヒントになるのではないだろうか。
