脱「PoC」「部分導入」 なぜ実行段階でプロジェクトが頓挫する?
2つ目の論点は、なぜ多くの企業がPoCや部分導入から先へ進めないのか。長谷川氏は、その要因も1つ目の論点と同じく組織構造だとした。
「AIエージェントで業務効率を高めよう」という方針には、全本部長が賛成するだろう。ところが、口では同意しても実際には動けないのが現実。実行段階になると、必ず部署間のリバランスが生じ、各責任者は自身の領域が不利にならないよう振る舞い始めるという。
たとえば、業務がA・B・Cの3部署にまたがる場合、パイプラインを最適化すれば「A部署の業務はC部署が引き受けたほうが良い」という結論に行きつくかもしれない。総論では全員が納得するが、実際に適用しようとすると、引き受ける側のC部署はリソース不足やスケジュールといった理由を並べて躊躇する。
「PoCに基づいて全社的な方向性は決められます。しかし、いざ本番運用を始めるとき、適用される側は、一時的に作業が増えたり責任が発生したりするため消極的になってしまう。結果的にプロジェクトが頓挫するケースも珍しくありません。経営層がトップダウンで号令をかけない限り、組織はなかなか動かないのが現実です」(長谷川氏)
トップダウンが重要とはいえ、具体的にどのように指揮をしていくべきかを考えなければならない。野口氏は「その号令の“中身”を、誰がどう設計すべきか」と新たなテーマを設定した。それを受けて、長谷川氏が挙げたのがある上場企業の事例だ。
BPRを完了させてからのAIエージェント化を目指した同社だが、やはり最初のBPRがボトルネックとなった。効率化が望まれる冗長な業務でも、それを手放すよう現場を説得することが難しく、一向に進まなかったという。そこで同社の社長は、冗長な業務を効率化してからAIエージェントを導入するのではなく、既存業務のままでAIエージェント化を進める方針へと転換した。
「どのような形でもAIエージェント化することで、まずは人手が不要になります。それからAIエージェント向けにBPRをすれば良いという発想です」(長谷川氏)
人間の合意形成という最大の難所をあえて迂回する選択だ。
「今やAIエージェントは高度なPC操作、ブラウジング操作が可能となっています。そう考えると、組織体制の最適化を待たずに、最初からAIエージェントを適用することも有効な手立ての一つですね」(野口氏)
