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AIで仕事は速くなったが、売上や利益への寄与は?LayerX福島氏が説く「組織AI」の社会実装

1人あたり月約30万円のトークン使用料から見えた、人とAIの協働ストーリー

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 ChatGPTやClaudeの浸透で、個人の生産性は確かに上がった。だが、売上やコストといった会社の経営数字は変わっただろうか。2026年9月3日に開催されたLayerX主催のカンファレンス「Bet AI Day 2026」では、体調不良で急遽登壇できなくなった代表取締役CTOの松本勇気氏に代わり、代表取締役CEOの福島良典氏がオープニングトークとキーノートを続けて務めた。この1年のAIの環境変化を振り返りながら、AIを「使う」組織から、AIが「働く」組織への道筋を語った。

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8ヵ月でコストは20分の1。「最高の知能が格安で手に入る時代」に残る現実とのギャップ

 「Bet AI Day」は、法人支出管理サービス「バクラク」などを手がけるLayerXが主催するAIカンファレンスだ。2回目となる今回のオープニングトークに立った福島氏は、冒頭でこの日のメインメッセージを「Bet AI “エージェント”」と掲げた。

 「AIエージェントが、単なるツールを超えて自律し、一緒に仕事をする同僚のような存在になっていく。どんどん作り、使って、会社に溶け込ませてほしい」(福島氏)

 福島氏は大学時代にAIを研究し、大学院在学中の2012年にGunosyを創業。記事推薦や広告配信のアルゴリズムを自ら開発しながら経営し、創業から約2年半で上場を果たした。2018年からはLayerXの代表取締役CEOを務めている。

 第1回だった昨年、福島氏は「UserからBuilderへ」というテーマを掲げた。この1年を振り返り、「私が言うまでもなく、みんながビルダーになった。特にコーディングやデザインといった『作る側』にAIが入った1年だった」と語る。

 変化を象徴するのが価格だ。2025年11月に登場したClaude Opus 4.5は、入力100万トークンあたり5ドル、出力25ドル。誰もが「信じられないほど賢い」と感じた知能である。それが2026年7月には、Opus 4.8超えのコーディング性能をうたうGPT-5.6 Lunaが入力0.2ドル、出力1.2ドルで登場。DeepSeek-V4-Flashに至っては入力0.14ドル、出力0.28ドルだ。わずか8ヵ月で、最高水準の知能のコストは20分の1から60分の1に下がったことになる。

 一方で福島氏は、AIエージェントを「モデルにハーネス(AIを現実の業務につなぐ実行環境)が付いたもの」と整理したうえで、競争の主戦場の変化を指摘する。ナレッジをどう構築するか、ツールをどう整理するか、ガードレールやセッション管理をどう設計するか。どのモデルを選ぶかではなく、ハーネスをどう構築して現実の仕事に着地させるかに戦場は移っているという。

 ここで福島氏が「今日覚えて帰ってほしい」と挙げたキーワードが「現実とのギャップ」である。モデルの知能は急速に進化しているのに、社会に届いた価値はそれに遠く及ばない。その差のことだ。

知能の進化に社会への浸透が追いついていないと語る、LayerX代表の福島良典氏

知能の進化に社会への浸透が追いついていないと語る、LayerX代表の福島良典氏

 「LLMを使えば帳票を読み取れることは、AIに触れている人ならほとんど知っています。でも、そんな単純なことですら、まだ世の中に普及しきっていないのです」(福島氏)

 OCRのような「AIで仕事を補助する」プロダクトですら、世の中の普及率は良くて10%程度という感覚だという。数百兆円規模の労働市場の仕事をエージェントが担うようになるこれからの時代、この現実とのギャップをどう埋めるかが、人口が減っていく日本にとって決定的なテーマになると福島氏は強調した。

 そのために必要なのが「ループを閉じる」ことだ。セキュリティや権限、組織のルールを越えてエージェントを企業の内側に届け、実際に仕事をさせ、評価を作り、改善のループを回す。従業員のように、仕事をすればするほど成長するエージェントを企業の中に作ることが重要になるという。

 福島氏は「AIで新たに開かれた市場機会は、とても1社では埋めきれない。会社の枠を超えて日本のAIを盛り上げる仲間として、市場の王道・ど真ん中にチャレンジしていこう」と呼びかけ、オープニングを締めた。

 本来はここで、CTOの松本勇気氏によるキーノートに移る予定だった。だが松本氏が体調不良により急遽欠席となり、キーノートも福島氏が続けて務めることになった。テーマは「AIを『使う』から、AIが『働く』へ。『組織AI』の社会実装」である。

業務の「自動運転」はレベル4へ。この1年に起きた四つの環境変化

 キーノートは、1年前に松本氏が語った内容の答え合わせから始まった。昨年のメッセージは「LLMをとにかく使おう」というものだった。AI時代の競争優位はスピードだけだという「Speed is the new Moat」、まず試すこと、そして業務の完全自動運転の三つである。

 このとき松本氏は、業務の自動化を車の自動運転になぞらえたレベル分類で説明し、「世の中はレベル2が普及し始めた段階だが、AIはすでにレベル3まで行ける」と予測していた。福島氏は「振り返ると、まあまあ当たっていた」と評価する。

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 そのうえで、この1年はさらに一段進むと見る。特定条件下では完全に自動運転する「レベル4」だ。例外処理や人間へのエスカレーションが必要かどうかの判断すらエージェントが行い、通常の業務範囲はAIがオートパイロットでほぼ完了させる。人間は残ったわずかな例外だけをチェックする世界である。

 なぜそう考えるに至ったのか。福島氏はこの1年の環境変化を四つ挙げた。

  1. 自律実行性能の向上
  2. 「作ること」の価値低下
  3. Token MaxxingからToken Economicsへ
  4. Ambient Agent(環境常駐型エージェント)の台頭

 一つ目の自律実行性能について、福島氏は根拠を四つ示した。

  • 数学やコーディングなどのベンチマークが完全に飽和し、長時間タスクの性能も伸び切りつつある
  • Claude Mythosに代表されるように、サイバーセキュリティ能力などで「人間超え」の性能が現れた
  • Claude Fableの登場で、AIの作業をメタ的に改善するAI、つまりエージェントを作るエージェントが実用になり始めた
  • 圧倒的な低価格化

 福島氏は「来年の今頃には、今の最高品質のモデルがおそらく50分の1以下の価格で使えるようになる」と見通しを示した。

 残る三つの変化は、いずれも「組織でAIをどう使うか」に直結するものだ。次章で順に見ていこう。

次のページ
作ることが希少ではなくなり、Token MaxxingからToken Economicsへ

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://aidiver.jp/article/detail/703 2026/09/08 14:00

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