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ANAが掲げた2,700億円のDX投資 AIで目指すノウハウ継承とリソース再配置の理想像

「グループ総デジタル人財化」への具体策

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客室乗務員の知恵を形式知に 現場主導の泥臭い取り組み

 社内ナレッジの活用において、現在多くの企業で使われているのがRAGだろう。ANAでも、バックオフィスに限らず空港含めた各現場でRAGの仕組みを取り入れている。しかし「暗黙知をAIが学習できる形にするのは一朝一夕にはいかない」と村井氏。

 同社では、一部の取り組みにおいて、現場の暗黙知の収集を各部門の自律性に任せている。具体的には、ベテラン社員へのインタビューを通じて得たノウハウのテキスト化や、社内の有識者が自身の思考をデータとして直接AIに登録するプロセスを各現場で泥臭く積み上げているという。その象徴的な事例が、客室乗務員によるアンケート分析だ。

全日本空輸株式会社 デジタル変革室イノベーション推進部AI推進チーム リーダー 村井貴彦氏
全日本空輸株式会社 デジタル変革室イノベーション推進部AI推進チーム リーダー 村井貴彦氏

 毎月、フライトごとに届く数千件の顧客アンケート。これまでは客室乗務員が一点ずつ読み、良い点か改善点か、それはどのような場面で起こったことかなどの情報をタグ付けし、手作業でカテゴリー分けしていた。ANAでは、この仕分け作業を半自動化するAIを開発している。

「カテゴリー分けも経験値によって質に差が生まれます。ベテランはアンケートの文脈からお客様が本当は何を望んでいたのかという深い思考まで自然に読み取れますが、若手にとっては難しい。ベテランだから気づけるコンテキストを、どういうステップで思考し、分類しているのか。その流れを徹底的に書き出してもらい、AIに学習させています」(木住野氏)

 現在も最終的にはすべてのアンケートに人の目を通すが、事前にAIが整理しておくことで、スタッフは冷静に向き合える。なおかつ、短時間で改善策の立案に集中できるようになった。

 当然ながら、コンテキストを学習させたからといってAIが常に100点の回答を出すわけではない。村井氏は「60点、80点でも良しとして進める姿勢も必要」だと指摘する。

「現在はプロンプトによる指示の最適化と、学習データ自体の質を高める両面からのアプローチを行っています。これにより、マニュアルを読ませるだけでは得られないANAらしい回答の生成を目指しているのです」(村井氏)

 こうした取り組みによって、同社はさらなる顧客体験の向上を見据えている。既に工数削減などの定量的な成果は出ているが、顧客への還元はこれからだという。この定性的な効果をはかるのは容易ではない。同社がKPIの一つとしているNPSは、AI単体で向上するものではないからだ。

「デジタル技術だけが発展しても、実際にお客様と向き合う従業員がいなければNPSは上がりません。AIが裏側で彼らを支え、生まれたリソースでお客様に新たな価値を届ける。今後は人とAIを掛け合わせ、このサイクルを上手く回していく必要があります」(木住野氏)

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リスク前提で最適解を探す PoCから実装に移すための考え方

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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