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AIがもたらす未来と企業の現実解

「AI変革の要諦は技術ではなく文化」富士通・福田譲が語る当事者の実践論


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トップダウンとボトムアップの両軸でAX推進

──続いて御社のAX推進の状況について教えてください。各社模索の状況だと思いますが、御社はどのような状況でしょうか。

福田:Ridgelinezが企業のAI利活用高度化・成熟度モデルを持っています。5段階レベルになっているのですが、それで示すとレベル3「特定業務での活用深化・高度化」まで到達している状態です。

Ridgelinezが作成した企業のAI利活用高度化・成熟度モデル
Ridgelinezが作成した企業のAI利活用高度化・成熟度モデル

 当社では独自の生成AI基盤をグローバル・グループの全社員に提供しています。全社員11万3千人中、現時点では6万7千人程度の社員が毎日アクティブに使っている状況で、一日あたり約38万回以上の利用があります。

 この基盤はマルチLLM(大規模言語モデル)に対応しており、例えば、提案前の業界分析や顧客の経営状況・課題の分析や仮説立案、事例収集や訪問資料作成、提案書の採点/改善やロールプレイ、社内の各種方針検討会議の準備、開発者向けのソースコードやテストシナリオの自動生成など、職種別・用途別に様々なAIアプリが用意されています。社長の時田の考え方や口癖を学習させた「トッキーAI」など、社員のアイデアや要望から、カジュアルなAIアプリも提供されています。

 AIエージェントを経営会議に導入して、AI時代の経営の意思決定のあり方を再考するなどもしています。トップダウン・ボトムアップの両輪で手あたり次第にやっている感じです。

富士通における生成AI利用状況の取り組み
富士通における生成AI利用状況

技術やスキルの話ではない。ポイントはカルチャー醸成

──6万7千人の社員が、自律的にAIを活用できるようになった背景には何があるのでしょうか?

福田:使いやすいAI基盤を整える側面はあると思いますが、単にAI基盤を導入するだけでなく、「誰もが安心して新しいやり方を挑戦できるカルチャーや環境」を醸成することが大事だと考えています。これはフジトラをはじめ、これまで取り組んできた社内改革で一貫して取り組んできていることです。

 上司から言われてやる、あるいは今までのやり方をそのまま続けるのではなく、現場のことを一番わかっている現場が、みんなで考え、自発的に決めて変化できる・実行できるようになることを重視しています。

 先日も「断捨離フェス」という取り組みを、みんなでやりました。「この業務はいらない」と思うものをオンラインで匿名で出してもらって、投票していくのですが、現場がアイデアを出し現場が投票して決めるので「じゃあそれをAIで解決してみようか?」という流れになります。

 フジトラ以前は、このようなカルチャーは十分ではありませんでした。「自分たちの手で会社を変えていこう」という意識が芽生え、自律的な変革が生まれるカルチャーや環境が着実に強まっているのを肌で感じます。

──カルチャー醸成。すごく大事ですね。AIと共存できる自律的な人材が、これからより求められてくる流れになると感じます。

福田:そのとおりですね。今は多くの企業が、AIを業務の「コパイロット(副操縦士)」として活用する段階です。しかし、経費精算や給与計算、資料作成といった定型業務をはじめ、その他の様々な業務がいずれ「オートパイロット(自動操縦)」へ移行していくでしょう。

 AIの効果が最も発揮されるのはコパイロットではなく、オートパイロットです。先ほどのAI成熟度モデルでは、当社はレベル3の認識ですが、早期にレベル4、レベル5を目指します。そして人はより創造的な仕事に集中できるよう、会社としてもそれを実現できる環境を整えていきたいと考えています。

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トップから現場までが一体となる「全員参加型変革」

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/5 2025/09/25 12:11

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