AIで人手不足は解消へ 効率化の先にある競争力とは何か
2026年に入り、AIの実装先として注目を集めている領域がある。コンタクトセンターだ。日本企業の中でも、この領域は長年、深刻な人手不足に悩まされてきた。理不尽な要求を突きつけるカスタマーハラスメントも相まって、人材の定着も難しい現状がある。
しかし、経営観点で見れば、コンタクトセンターは単なる“クレーム処理係”ではなく、顧客の生の声が最も集まる場所。本来であれば、コンタクトセンターを起点にVOCを活用し、CX(顧客体験)の向上、そして事業成長につなげていくべきだろう。こうした考え方は、決して新しいものではない。むしろ、理想論として以前より掲げられてきた。ところが、慢性的な人手不足によって、多くの場合は後回しにされてきたのだ。
一方で、財部氏は「2022年後半にGPT-3.5が登場してから、この状況が変わり始めている」と語る。
「AIが、言葉の意味や文脈を踏まえた上で高度な処理ができるようになりました。それにより、急速にAIチャットボットなどの導入が進んでいます。ただし、AIチャットボットだけでは対応範囲に限界があるのも事実。事前に定義されたルールのもと動くため、柔軟な対応や自らタスクの処理をすることまではできないからです。そこで最近では、顧客情報の変更をはじめ、AIが自律的に手続きやタスクを完了させるAIオペレーターの実証実験も、さまざまな企業で行われています。それによって、構造的な人手不足は解消に向かっているのです」
とはいえ、手放しでは喜べない。その先には、激しい競争が待ち構えているからだ。海外企業も日本に進出する中、人口減少の影響で日本国内の需要自体は縮小していくことが目に見えている。こうした縮小する市場を増え続けるプレイヤーで奪い合う構図の中、競争優位性のキーファクターとなるのがCXだという。
また現代は、ひとたび負の体験を顧客に与えれば、たちまちSNSで拡散されてしまう時代でもある。ネガティブな感情を抱えた問い合わせが多いコンタクトセンターは、その応対一つでブランドの見え方を左右する。
さらに、直接的な不満を企業に伝えずに離れていく「サイレントカスタマー」の存在も見逃せない。結果的に一人の顧客を失うことは、そのまま利益の減少に直結する。求められるCXの水準は、むしろ上がり続けているといえるだろう。
「AIの導入で人手とコストが10分の1になっても、それを理由に顧客が自社商品やサービスを選ぶわけではありません。この事実に気づいている企業が、意外にも少ないのです。実際、コンタクトセンターのAI化の話題は、業務効率化に終始しています。経営戦略として短期的なコスト最適化に加えて、どうすれば業績が上がるのかを先に描くべきです」
具体的には、売上を上げるために既存顧客のリピート購入をどの程度獲得すべきか、そのために何が必要かを議論できる仕組みを先に構築しなければならない。「それを支える基盤が、細かな商品の改善点から自社ブランドのイメージまでが詰まっているVOCだ」と財部氏は語る。
「まずは、コンタクトセンターを中心に社内に蓄積された顧客の声を統合することが、変革のスタートラインです」

