どこまで業務を明文化できているか AI化がうまくいく企業の共通点
博報堂DYホールディングス CAIO 森正弥氏(以下、森):砂金さんとは以前から付き合いがありますが、改めて自己紹介をお願いできますか。
Gen-AX CEO 砂金信一郎氏(以下、砂金):ソフトバンクのグループ会社であるGen-AXのCEOを務めています。ソフトバンクではさまざまな領域のAIに投資をしていますが、Gen-AXはAI×コールセンターが事業の柱です。
私自身のキャリアでいえば、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)がまだ世の中に浸透していない時代に、マイクロソフトでMicrosoft Azureのテクニカルエバンジェリストを約8年。その後、合併前のLINE(現:LINEヤフー株式会社)に移ってAI事業の責任者を務めていました。
転職のきっかけは、覚えている人もいると思いますが2015年頃に話題になったLINEの女子高生チャットボット「りんな」です。10年前の当時、私はマイクロソフトでAI「りんな」にどのデータをどう学習させるかという裏側の仕組みを支えていました。その中で「今後はアルゴリズムで勝負するのではなく、データの取得・活用の同意を得る仕組みにフォーカスしたほうがいいのではないか」と感じたんです。
さらにLINE時代は、スマートスピーカー「CLOVA」の事業開発などに携わりました。結果的に事業継続が難しい面もありましたが、音声認識においてGPT-3でLLMの性能が各段に上がったのは大きかったですね。こうしたキャリアが、今のGen-AXにつながっているのだと思います。
森:LLMから音声認識、「りんな」では実際に人とAIとのコミュニケーションの仕組みを作られていて、今はコンタクトセンターのソリューション。長年のキャリアの集大成として、さらなる挑戦をされているように感じます。昨今の生成AIトレンドの変化は非常に激しさを増していますが、新たな技術を活用したソリューション化にどう取り組んでいますか。プロダクト開発はもちろん、いわばクライアント先にDXを仕掛けていくということですよね。
砂金:私自身や当社の開発エンジニア、リサーチャーからすると、どんどん新しい技術、いってしまえば「おもちゃ」が出てくるわけです。もう試さなければ気が済まない。むしろ楽しくて時間が足りないという感覚です。OpenAIにGoogle、Anthropic、当社でいえばSB Intuitionsもですが、LLMを開発している企業のアウトプットが非常に速いんです。それがAI時代の原動力でしょう。
森:事業としては伝統的な日本企業、いわゆる「JTC」向けの支援が多いように見えますが、どのような戦略を描いているのですか。ある意味、日本企業のDX請負人ともいえると思っています。
砂金:率直にインパクト重視で取り組んでいきたいですし、結果的にそうなっていると思います。最初から導入事例の件数を気にされる企業よりも、自らがその業界の突破口になる覚悟で新しいことに挑戦する企業と一緒に仕事をしていきたいです。
現在のクライアントは大手の金融機関が多いですが、実は周囲のイメージと違ってAI化が進めやすいといえます。クライアント自身が「まったく土台が整っていない」と謙遜されるのですが、業界別で相対的に比較すると金融機関はデータやオペレーションがきれいに整備されています。金融庁からの指導や法律上の制限もある中で、業務を明文化できているのです。
一方で、他業界だとここが有耶無耶になっている企業が多い。たとえば新サービスのリリーススピードが速い場合、現場のオペレーションがついていけないケースは珍しくありません。各現場の暗黙知で個別対応するのが当たり前になってしまっています。しかし、業務の手順書が出来上がっていない状態でいきなりAI化するのは難しいのが現実です。
