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AIdiver編集長インタビュー

「生成AIはツール、AIエージェントは資本」待ったなしのAI時代、経営層に問われる意思決定

Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏インタビュー

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人間という「最大のボトルネック」が外れる日

押久保:トークンという資源を配分し、AI能力という資本を積み上げていく。今後さらに、この議論が発展していくとお考えだそうですね。

柴山:いくつかの視点から、より議論が進むと思っています。

 まず、モデル提供側が投資フェーズから少しずつ回収フェーズに入りつつあることです。巨額投資を続けながらも収益化圧力も強まっているため、集客優先の価格設定から、収益化観点を鑑みた価格設定のバランスを取り始めていくと予想しています。端的にいうと、ユーザー側としてはコスト上昇リスクもあります。

 より本質的なのが、仕事の起点が人間だけではなくなるという点です。今までのタスク型のAI活用では、エージェントが自動で処理するステップが増えたとはいえ、その起点の多くは人間でした。人間が指示した回数しかモデルを叩かない。つまり、トークン利用の観点では、人間が最大のボトルネックになっていました。

 ところが、業務OSとしてエージェントが入ると、個々の処理ごとに人間の指示を待たなくなる。当社の場合、質の高いエージェントが毎日すべての広告データを分析し、構造的な問題を発見して改善提案をする。それが、人間の都度の指示なしに動き始めています。もちろん目的やルールを決めるのは人間ですが、個々の処理の起点から人間が外れていくわけです。

 エージェントがエージェントに指示する領域が増えれば増えるほど、モデルを叩く回数は設計次第では指数関数的に増えうる。人間の生産性向上は、私の感覚では、せいぜい5倍~10倍が上限かもしれません。しかしエージェント同士が会話し、並列で仕事を進めれば、人間だけでは処理できない量の仕事を生み出せる。その世界を前提にすると、膨大なトランザクションが走り、トークンの利用量も今よりはるかに増える。だからトークン調達を、今から経営課題として認識すべきなのです。

押久保:その投資の上限は、どう見積もればよいのでしょうか。

柴山:見積もるというより、投資できる額とリターンを見ながら上限を見極めていく形です。仕組み上は、リターンさえあればいくらでも使える構造ができてきます。そのときに、一番安い方法を自分たちで持っているのか、ベンダーロックイン(特定ベンダーへの依存で乗り換えが困難になること)で高い方法しかないのか。それによってROIも変わります。

 人の採用をどこまでスケールさせ、どこに配置するのかと同じ考え方で、トークンをどこまで確保し、どの業務に配分するのかを考える。その配分を通じて、AI資本をどこまで厚くできるか。それがこれから、企業の生産性や価値を決めていく一つの要素になると思います。

「蛇口をひねれば水が出る」と思わないこと

押久保:モデル供給の制限や規制の議論など、供給側の不確実性も増しています。安定調達のために、経営は何に気をつけるべきでしょうか。

柴山:まず大前提として、モデルの能力も、コストも、そして地政学の観点もアンコントローラブルだと思っておいたほうがいい。今日ある当たり前が明日あるかどうかは、まったく見えません。何も保証されたものはない、という前提に立つことです。

 その上で取りうる手段は、至極当たり前のことです。日本の石油調達と同じで、調達と投資は基本的にポートフォリオ、つまりリスク分散をどう考えるかという話でしかない。ポートフォリオを組むこと自体は目新しくありません。必要なのは「この領域はアンコントローラブルな未確定事項が極端に多い」という前提認識です。

押久保:分散だけが正解ではない、とも。

柴山:そうですね。もちろん、強固なパートナーシップを取ることも戦略の一つです。特定のベンダーとエクスクルーシブ(独占的)な契約を結び、常に一番いい条件を引き出すのも戦略として然るべき手段だと思いますし、逆にOpenAI、Google、Anthropicなどすべてを利用するマルチな戦略もあります。そこにオープンウェイトモデル(モデル本体のデータが公開され、自社のサーバー環境でも動かせるAIモデル)をベースとしたオンプレミス環境を組み合わせる戦略もある。どれを選ぶかに企業の色が出ますし、それ自体が競争戦略になっていくと思います。

 一番大事なのは、「蛇口をひねれば水が出ることが当たり前」と思わないことです。トークンは従量課金となり、どの蛇口を選ぶかで水の価格は変わる。そして、ある日その蛇口が止まるかもしれない。その中でどう考えるかは、企業ごとの色でいいと思うんです。

押久保:最後に、経営層へのメッセージをお願いします。

柴山:釈迦に説法だと思いますが、あえて言うなら、まず生成AIとAIエージェントの違いを理解することです。言葉の違いではなく、そこに起きるインパクトの違いです。

 生成AIを個人の便利なツールとして配る段階では、「資本を形成する」という捉え方は見えにくかったと思います。AIエージェントになって、人の作業の一部を担う範囲が圧倒的に増え、その能力が会社に蓄積されるようになったことで、資本としての性格が一気にはっきりしてきた。なぜそうなのかを、正しく理解することが第一です。

 そこが理解できれば、「どのレイヤーに、どういう意思決定で、何を変えるべきか。AI資本を会社のどこに築き、どの業務に適用するか」は、自ずと答えが出てくるんじゃないかと思います。今日お話ししたことも、今年の終わり頃には「当たり前のことを何を言っているんだ」と思われるはずです。それぐらいのスピードで、世界は変わっています。

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/659 2026/09/04 09:00

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